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郊外への移住余儀なくされる中低所得層
エッセンシャルサービスなどの“空洞化”の懸念
東京の住宅価格の高騰が近年、一段と激しくなり、23区内の平均マンション価格は都心部や湾岸エリアを中心にコロナ前から2倍近くに達している。
高市政権は、海外からの不動産投機などの動きを抑える取り組みを打ち出しているが、東京の住宅価格高騰の要因はそれだけではない。
情報通信や金融、専門サービスなどの高付加価値サービス業の集積が進み、地方との格差が広がる一方で、そうした成長分野に従事する高所得層が増加していることも、価格高騰の要因だ。
だが、その一方で、中低所得層は生活環境が厳しくなり、郊外への居住を余儀なくされている。こうした現象は「ジェントリフィケーション」と呼ばれ、欧米諸都市では長年にわたり社会問題として議論されてきた。
住宅価格の高騰は、エッセンシャルワーカーの居住難や、そうしたサービスへのアクセス低下を招く。また、かつては多様な所得層が混在していた地域が富裕層向けの高級マンションや商業施設に姿を変えることで、その地域の文化やコミュニティーが失われ、社会の分断を深める要因ともなる。
問題解決には手ごろな値段の住宅供給を拡大するとともに、地方中核都市の魅力を高め「多極集中」の国土構造に転換することが重要だ。
高市政権は連立パートナーの日本維新の会が唱える「副首都構想」を推進する構えだが、副都心構想を超えて、「地方への集積」の視点で企業や人口を中核都市に呼び込む政策展開が求められる。







