「雑談しないリーダー」と「絆を重視するリーダー」の違い

 ただ、一般論として、ビジネスリーダーが相手に厳しいばかりでは、立ち行かないこともある。厳しくするか、フレンドリーに接するかの有効性は、置かれた状況によって大きく左右されると言えよう。例えば、こんな状況を考えてみよう。

 あるプロジェクトは、非常に高い目標を課されていた。最近の労務環境の整備により、スタッフの拘束時間を増やすこともできず、徹底したプロセス管理が必要であった。

 プロジェクトリーダーは、誰が何をやるかを細かく決め、次々と具体的な指示を出した。毎日、進み具合を細かくチェックし、遅れがあればすぐに修正を指示した。会議では雑談はほとんどなく、いつも「どうやって目標を達成するか」の話だけに集中した。

 一部のメンバーからは「厳しすぎて疲れる」という不満も出た。リーダーはいっさい甘さを許さず、強いリーダーシップでチームを引っ張った。結果として、チームは数々の困難を乗り越え、予定通りに目標を達成できた。リーダーの厳しい管理と明確な指示がなければ、成功は不可能だったといえる。

 別のチームでは、メンバーが集まったばかりで、まだお互いをよく知らない状態だった。どう進めるかについても意見が分かれ、チームの雰囲気はぎこちなかった。リーダーはまず、一人ひとりのメンバーとじっくり話をした。

 おのおのが何を考え、何を不安に思っているかを丁寧に聞いた。チーム全体の会議では、すぐに結論を出さず、自由に意見を言い合う時間を大事にした。リーダーは、すぐに結果を出すことよりも、「チームの絆を強くすること」を優先した。

 時間はかかった。次第にメンバー同士の信頼関係が深まり、自分たちで動けるチームへと育った。リーダーが人間関係を重視したことが、チームの力を引き出す大きなきっかけになった。

 以上の場面は、リーダーシップのあり方が一様ではないことを示唆している。