「一緒に仕事をしたくない人」にどう向き合う?

 プロジェクトの成否やチームの機能は、リーダーの資質だけで決まるものではない。リーダーがどのような状況に置かれ、状況に対してどのようなリーダーシップスタイルを発揮したか、相互作用によって大きく影響を受けるのである。

 リーダーがうまくいくかどうかは、その人自身の能力だけでは決まらない。リーダーが置かれている環境や周りの状況によって、力を発揮できるかどうかが変わる。考え方を「コンティンジェンシー理論」と呼ぶ。アメリカの組織心理学者フレッド・フィードラーが1960年代に提唱した。

 提示された理論は、それまで「理想のリーダー像は一つ」であり、その究極のリーダー像を探していた流れとは違い、「場面ごとに求められるリーダーが違う」と主張した点で画期的であり、その後のリーダーシップ研究に大きな影響を与えた。

 しかし、フィードラーは、「リーダーそれぞれの性格ややり方が、どんな場面で一番うまく力を発揮できるか」に注目した。リーダーがどのタイプかを調べるため、フィードラーは「LPC(Least Preferred Coworker:もっとも一緒に働きにくい同僚)」という指標を用いた。

 リーダーに「今までで一番一緒に仕事がしにくかった人」を思い出してもらい、その人を「友好的か非友好的か」「協力的か非協力的か」などで評価させる。苦手な相手にも好意的な評価をするリーダーは「人間関係指向型」とされる。低い点数をつけるリーダーは「タスク指向型(仕事重視型)」とされる。

 フィードラーは、リーダーが最も成果を上げるのは、「リーダーのタイプ(タスク指向型か人間関係指向型か)」と「状況のコントロールのしやすさ」がうまく適合した時であると考えた。

 研究の結果、リーダーにとって状況が「非常にコントロールしやすい」場合、あるいは逆に「非常にコントロールしにくい」両極端な状況では、「タスク指向型」のリーダーが最も高い成果を上げることが示された。