コンビニのたまごサンドはガッカリだけど…

「1人前」の意味わかってる?コメダのデカ盛りエッグサンドがリッツ・カールトン級の感動だった!Photo:Diamond

 コンビニのサンドイッチを開けて、たまごサンドのボリュームの少なさに落胆したり、おにぎりは小さくなったり、海苔がなかったり、チョコレート菓子の個包装の数が減っていることに気づいたりすると、値段をそのままにしてくれる努力は嬉しいものの、少し寂しさを感じるのも事実だ。

 インフレと原材料高の影響で、外食や中食業界ではコスト削減の圧力が強く、各社が静かに量を減らす動きが進んでいる。そうしたなかで、コメダはまったく逆の方向に舵を切っている。ボリュームを増やし、見た目も満足感も派手にし、価格以上の価値を顧客に体感させている。

 決算の数字にも「顧客満足」は表れていると言っていい。2025年2月期における売上収益は470億円を超え、前期比で8.8%の増加を記録している。営業利益は88億円、当期利益は約58億円であり、フランチャイズ加盟店への卸売収入が前年を10%以上も上回った。

 既存店ベースでも売上前年比は105.1%と高い水準で推移しており、特別な値下げやクーポンがないにもかかわらず、消費者が継続的に通っていることがうかがえる。パンや卵といった主原料が値上がりしているにもかかわらず、安定した業績が維持されているのは、まさに顧客の「体感的満足」が失われていない証拠である。

 満足を意図的に設計し、顧客の予想を大きく上回る体験を提供する手法は、マーケティング理論において「過剰満足戦略(Overdelivery Strategy)」と呼ばれている。

 これは単に量を増やすという話ではない。消費者の期待値を事前に冷静に捉えた上で、実際の提供時に期待を超える価値を与えるという構造的な手法である。

 戦略を成功させるためには、商品の品質、サービスの一貫性、従業員の行動様式、そして組織全体の文化にまで細やかな調整が必要になる。

 戦略を体系的に整理した名著として知られるのが『Exceptional Service, Exceptional Profit: The Secrets of Building a Five-Star Customer Service Organization(例外的なサービス、例外的な利益――5つ星サービス組織を作る秘密)』である。

 著者はリッツ・カールトンの人材教育に携わったレオナルド・インギレアリーと、有名経営コンサルタントのミカ・ソロモン。発表年は2010年で、彼らは以下のように書いている。