ヤム・オリスカーさんは昨年、Vision Proをいち早く購入するために飛行機でイスラエルからニューヨークを訪れた ヤム・オリスカーさんは昨年、Vision Proをいち早く購入するために飛行機でイスラエルからニューヨークを訪れた Photo:Amit Elkayam for WSJ

 米 アップル の複合現実(MR)ヘッドセット「Vision Pro(ビジョンプロ)」をいち早く購入した人々がこの1年間で得たものはただ一つ、後悔だ。

 近未来的なスキーゴーグルにも見える3500ドル(約50万円)のこの高額商品は「ほこりをかぶっている」。バージニア州センタービルの不動産業者、ダスティン・フォックスさん(46)はそう話した。「この1年で使ったのは多分4回程度だと思う」

 Vision Proは、フォックスさんがもはや手に取ることのない他の機器などと一緒に箱の中に入っている。

 Vision Proは2024年2月に大きな期待とともに発売された。アップルにとって数年ぶりの大型商品とのふれこみで、空間で入力できることなどが強調された。ただ実際に装着した購入者たちが体験したのは、周囲の冷ややかな視線や首の痛みだった。Vision Proはいまや、手に入れて得意になっていた自分がいかに勘違いしていたかを日々痛感させるものとなっている。

 フォックスさんはVision Proの発売と同時に、どうしても手に入れなければならない気持ちにかられた。「何か新しいものが出ると、子どものようになってしまう」

 仕事に使うつもりで装着してみた。

「重すぎる」。重量が1ポンド(約450グラム)を超えるVision Proについてフォックスさんが感じたことだった。「20分か30分以上装着していると首が痛くなってしまう」

 ニューヨーク在住のトビア・ゴールドスタインさん(24)はVision Proを使って映画やテレビ番組を楽しむことに胸を躍らせていた。だが結局、連続して使うのは無理だった。「60分もたつともうだめで、投げ出さざるを得なくなる」と話した。約4カ月間、手を触れていないという。