「財源がないのなら借金すればいい。財政赤字なんていざとなればどうにかなるっしょ」

 ご存じのように、日本は隣国の人がうらやむ国民皆保険などの手厚い社会保障がある。また、他国ではあり得ないほど低い廃業率、失業率を実現しており、貧富の差も小さい。

 しかし、そういう安定した国をつくるためにジャブジャブと公金を突っ込んだおかげで国と地方を合わせた政府債務残高は2023年度末で1442兆円にまで膨らんだ。対GDP比では237%にものぼる(経済界や有識者の有志でつくる民間の政策提言組織「令和国民会議」の発表数値)。

 ちなみにアメリカは121%、イギリス101%、ドイツ64%ということでG7の中で突出して悪い、ということがよく言われるが、世界の中でもこれは「最悪」の部類だ。

 先日、石破茂首相が国会で「日本の財政はギリシャより悪い」と発言して「首相のくせに、日本の信用を貶めることを言うなんてけしからん」と攻撃されていたが、実はあれは石破首相なりに配慮したもの言いだ。

 IMF(国際通貨基金)のデータを見れば、実はギリシャは日本よりも対GDP比はかなり小さいので比較対象にならない。正確には「レバノンより良くてスーダンより悪い」と言うべきなのだ(現代新書 2024年9月23日)。

 ただ、石破首相が売国奴扱いされたように、日本の財政が悪いという話は「日本を貶める嘘」「数字のトリック」と主張をしている人がかなりいる。

 そこでよく言われるのが、国や地方自治体が有する「資産」も勘案すれば、実は日本の財政はG7で2番目にいいという「説」だ。これは昨年の自民党総裁選で高市早苗衆議院議員が主張した(日本経済新聞 2024年9月25日)。

 また、「自国通過を発行している国はいくらでも国債を発行できる」という、いわゆるMMT理論を引っ張り出して日本の財政はまったく問題がないと主張をする人もいる。

 こういう考え方の人々が消費税や社会保障料の負担を減らす、もしくは「ゼロ」にするという減税政策を訴えているわけだ。