実際、社会主義国の人から見れば、日本は明らかに「同志」のようだ。たとえば、ゴルバチョフ書記長が日本のことを「世界で唯一、成功した社会主義国」と評したことは有名だ。

 また、中国人ジャーナリストの周来友氏も、Newsweekに「日本は世界に誇るべき『社会主義国』です」と寄稿している。弱肉強食で競争社会になっている祖国・中国と比べると、日本のほうが社会主義だとしてこう述べている。

「配給制度こそないけれど、平等で弱者に優しい社会がそこにある。(中略)社会主義が嫌で中国を脱出してきた人の中には、日本が中国よりも社会主義的だと知ってガッカリする人もいる」

 我々日本人は生まれた時からこの国にいるのでピンとこないが、社会主義国家の人から見れば、学校教育、企業文化などいたるところに、共産主義が根付いているのが日本なのだ。

 といっても、中国や旧ソ連の思想やシステムがそのまま存在しているわけではない。共産主義を取り入れた後、日本型にカスタマイズして独自の「日本型共産主義」を築いてきた。

 よく日本は他国の技術や文化を取り入れて、日本流にアレンジして本家と異なる独自の進化をさせるのが得意だと言われる。たとえば、アメリカから自動車や野球を取り入れたが、共に本家と異なる独自の進化を遂げた。漢字やラーメンも中国から入ったが、今では立派に日本独自の文化だ。

 それと同じく、中国や旧ソ連から入った共産主義も独自の進化を遂げた。わかりやすいのは「終身雇用」だ。

 これはよく「日本企業の強さの源」的に語られるが、もともと日本にはそんな労働文化はなかった。明治時代の会社員はすぐに辞めたし、会社側もクビを切った(法政大学経営学会「日米企業システムの比較史序説(3)―雇用及び労使関係の日米比較史 1:1910 年代まで(上)―」)。

 1939年に制定された「国家総動員法」のなかにある「会社利益配当及資金融通令」や「会社経理統制令」で株主や役員の力が剥奪され、国のコントロールのもと、とにかく生産力をあげるために企業という共同体に国民を縛り付けておくひとつの手段として始まった。