物価高騰や一向に上がらぬ賃金の中で、こういう政策に期待したくなる気持ちは痛いほどわかる。しかし、財政赤字から目をそらして、自分たちの都合のいい屁理屈で借金を重ねていって最終的にはドボン……というのも、実は社会主義国家崩壊の定番パターンなのだ。

 バラマキと計画経済によって理想の社会主義国家を実現した――かのように見えた旧ソ連だったが、実際は借金に借金を重ねる大赤字状態だった。慌ててミハイル・ゴルバチョフ書記長(当時)がペレストロイカ(立て直し)を始めるが、目の前の赤字はほんの氷山の一角だった。

「ボリス・ゴスチェフ蔵相によると、すでに十年前から赤字財政が続いており、これを国立銀行からの借り入れで帳じりを合わせてきたのが実態だった。この財政欠陥のつじつま合わせは長年のでたらめな経済運営のツケが回ってきたものである。ゴルバチョフ政権はいまこのツケの支払いに忙殺されている」(読売新聞1988年11月15日)

 しかし、財政再建をしようと思っても一方で、国民は生活が苦しくなればなるほど「もっと安く」「前のようにタダで」と求めてくるので、その財源も借金しなくてはいけない。

 1991年10月、ソ連国立中央銀行(ゴスバンク)のボイルコフ副総裁はソ連紙「トルード」に対して、この年の8月に発行した紙幣の総額が、昨年1年間の発行額を上回ったことを明かした。その2カ月後、旧ソ連は崩壊した。

社会主義の破滅をなぞる日本の政治家たち
選挙シーズンに漂う絶望感

 ここまで言えば、筆者が何を言わんとしたいかおわかりだろう。

 1442兆円という凄まじい借金を抱えながらも、「安い食料品」「無料の医療・教育」、そして「給付金」などで借金が膨れ上がっている日本。その姿は、理想の社会主義国家を維持するため、ひたすら紙幣を発行し続けてきた旧ソ連の姿と妙に重なるのだ。

 こういう話をすると決まって「一党独裁でもない日本のどこが社会主義だ!」と怒る人がいる。だが、ベトナムやキューバの社会主義が、中国や旧ソ連と異なっているように、社会主義というのはそれぞれの国の社会や国民性によって変わってくるものだ。