米騒動の再来を防ぐにはどうすればよいか
第一に、コメ価格の安定を維持する上で最も重要なことは、家計が在庫積み増しに向かう動きを抑制することだ。その意味でカギは需要の制御だ。
ただし、供給サイドはまったく関係ないのかと言えば決してそうではない。家計が在庫積み増しに向かうのは、コメの供給が将来、途絶えてしまうのではないかという漠たる不安があるからだ。安定的な供給が将来にわたって続くというメッセージを政府が発出することは需要の制御につながるだろう。
裏を返すと、政府が急場しのぎで足元の供給量を増やしたとしても価格安定につながらないだろう。急場しのぎの一時的な措置では家計の不安は解消されないからだ。場合によっては、政府が急場しのぎの対応に追い込まれる姿をみた家計が将来の供給への不安を逆に高めてしまうリスクもある。
カギを握るのは足元の供給ではなく、将来の供給であり、安定的な供給に対する政府のコミットメントだ。
コメの供給を巡っては、現在、減反政策の見直しや輸入米の拡大などが議論されており、方向性は正しい。成否は、どこまで強いコミットメントを政府が家計に向けて出せるかにかかっている。
第二に、自然災害などの理由でコメの需給バランスが大きく崩れた際に、バランス回復のために価格メカニズムを使うべきか否かの議論を始めるべきだ。現在は、売り手と買い手の「合意」ゆえに、需要が高まっても価格を上げにくい空気がある。これは、社会正義にかなっている面もあるが、同時に資源配分効率を悪化させるという負の側面がある。
地震やパンデミックなど巨大災害が頻発する昨今の状況を踏まえれば、万一の場合に値上げを許すのがよいのか否か、許すとすれば値上げの経済的負担に耐えられない家計をどうやって守るのかなど、新たなコンセンサスの構築に向けて社会全体で議論する必要がある。