
「コメ担当大臣」に期待できる?
農政を甘く見てはいけない理由
二代続いての農水族、江藤拓農水相がありえない失言で辞任、代わって小泉進次郎氏が農水大臣となり、就任直後に「備蓄米の価格は5キログラム2000円程度。なるべく早く全国に届ける」と力強く宣言。「コメ担当大臣」を自称する小泉氏に、国民の期待は高まっています。
しかし、農水族と農協を甘く見てはいけません。備蓄米の値段が下がっても、普通に流通する米も来年生産される米も下がる保証はまったくありません。
現に、新潟県ではJA全農新潟県本部が3月に目安を決め、「一般のコシヒカリ」は60キロ当たり2万3000円と、去年示した額から6000円、率にして35%の引き上げを決定。しかも最低保証価格だということです。
小泉発言を参院選前の宣伝で終わらせないためには、農政全体を見直す必要があります。そのためには、国民はコメを巡る環境が経済常識からいかに乖離しているか、農水省の政策が農水省に絡む人々の保護を優先し、一般国民や日本全体のことをいかに考えていないかを知るべきだと思います。
これはコメだけの話ではありません。たとえば漁業。日本では、海水温度の異常上昇で収穫が下がっている、中国が乱獲しているといったことを、漁獲高衰退の原因としてマスコミも報じています。
しかし、日本のEEZ(排他的経済水域)は447万平方キロメートル。韓国は48万キロメートルで日本の10分の1なのに、日本は2023年の時点で韓国に水産物生産量で肉薄されています。昨年はすでに抜かれている可能性さえあります。また、ノルウェーのEEZは239万平方キロメートルで日本の半分しかないのに、2021年には日本は生産量で抜かれました。海温異常説は、農水省の努力不足の言い訳のように聞こえます。
林業も同じです。フィンランドの森林面積は約2280万ヘクタールで、林業の総生産金額は14年時点で約207億ユーロ(約3兆円)。それに対し、日本の森林面積は約2503万ヘクタールで、林業の総生産金額は約5807億円(22年)しかありません。
こうした話をすると、「コメの話からずれているんじゃないか?」と思う読者もいるかもしれません。しかし、そうではなく、こうした数字が日本の農政の間違いを理解するための重要な鍵になるのです。