株主総会2025#5Photo:FangXiaNuo/gettyimages

株主総会で経営陣の命運を左右するのは、業績だけではない。不祥事に対する機関投資家の視線が、かつてなく厳しさを増している。そこで特集『株主総会2025』の本稿では、機関投資家によって不祥事認定された上場企業を集計し、ランキングを作成。不祥事の内容と認定数の多さから、不祥事認定されやすい5つのパターンが浮かび上がった。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

阪急阪神HD会長の株主賛成率急落
不祥事に機関投資家の反対票が集中

 2024年の株主総会は、上場企業の経営者にかつてないほど厳しい現実を突き付けた。取締役選任において、機関投資家が下す「不祥事認定」が経営陣の命運を大きく左右するケースが急増したためだ。

 これまで機関投資家が議決権行使で主に問題視してきたのは、取締役構成や低ROE(株主資本利益率)、政策保有株式の多さだった。

 ところが、議決権行使の判断理由の開示が求められるようになり、不祥事認定までも状況が一変。大和総研政策調査部主席研究員の鈴木裕氏は、「不祥事の基準自体は以前から存在しているが、最近の特徴は、株価や業績に直接的な悪影響がなくても不祥事と認定されるケースが増えている点だ」と指摘する。社会的関心が高く、企業の姿勢が厳しく問われるような事案に対して、機関投資家はちゅうちょなく不祥事認定を行うようになっているのだ。

 その象徴的な事例が、阪急阪神ホールディングス(HD)である。23年9月、傘下の宝塚歌劇団で劇団員が死亡する事件が発生し、パワハラ問題と共に社会的な注目を浴びた。結果、前年には90.46%あった故・角和夫会長(当時)の株主賛成率は、24年には57.45%まで急落した。機関投資家の反対票も大きく影響している。

 実際、機関投資家は不祥事に関する情報を日々入念に調査している。不祥事認定に対して特に積極的な姿勢で知られる、三井住友DSアセットマネジメントの責任投資推進室は「当社の不祥事認定(社会的信用に関する基準)は、会社リリースやニュース、情報ベンダーのデータ等を基に月次でまとめる作業から始まる。国内企業(債券発行体を含む)に関して月間約100~200件(記事単位、続報含む)の情報を収集し、その内容(悪質性や社会的信用等)や規模・影響(財務的・社会的な影響と範囲)を精査して議決権行使に反映させている」と明かす。

 25年の株主総会でも、フジ・メディア・ホールディングスの中居正広氏を巡るトラブルやメガバンクの貸金庫問題など、不祥事が大きなテーマとなることは間違いない。そこでダイヤモンド編集部は、24年の株主総会において主要機関投資家10社が「不祥事認定」を行った上場企業を対象に、その認定数が多い順にランキングを作成。対象期間の不祥事の内容を併せて掲載した。

 各社の不祥事の内容や認定数を整理すると、ある傾向が浮かび上がってきた。今年の株主総会においても不祥事が焦点となる中、特に厳しい評価を受けやすい不祥事の特徴とは何か。次ページで詳しく見ていこう。