中国の若者の新しい価値観を反映

 中国ではこうした動きが驚きをもって語られている。

「ブラインドボックス」の手法がこれほどまでに受け入れられたこと、さらに正規版99元(約2000円)のLabubuがその数倍、さらには数十倍の価格で取引されるようになったことに、大人たちはひたすら首をかしげるばかりだ。さらには、「Lafufu」などという偽物まで出現している。

 Labubu人気を支えているのは、主にZ世代と呼ばれる1995年から2010年生まれ以降の人たちである。この世代は非常に「自分の感覚」を重視し、それまでの世代からは「自己中心的」とも言われがちな世代だ。その彼らが「自分が楽しいこと」を第一に、同世代の人たちとコミュニケーションを取るという「エモーショナル・バリュー」を理解することが、このブームを理解する鍵なのだそうだ。

 経済アナリストたちの分析によると、中国のこの世代は就職難や激しい競争に直面しているが、それを勝ち抜いたところで大して美しい未来が待ち受けているわけでもない。そのつまらなさを埋めるために、徹底的に「自らの楽しみ」にこだわる傾向があるという。

 日本では、若者たちがバッグにたくさんの「チャーム」としてキャラクターグッズや推しグッズをぶら下げている姿は、それほど珍しいことではない。だが、確かに中国ではこれまで、「傍からは何が楽しいのかよくわからない」ことを逆に標榜して、同世代だけで楽しむといった習慣はこれまでなかった。そんな新しい「楽しみ方」がLabubuブームを支え、同時に世界へと波及していったと言えるのかもしれない。

 Labubuブームが止まる兆しはまだ見えない。今まで知らなかったあなたの身近にも、Labubuが現れるかもしれない。そのとき、何気なく「あ、それ、Labubuだよね」と言ってみせれば、若者たちのあなたを見る目がちょっと変わるかもしれない。

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