また、OECDはリスクベースのデューデリジェンス(リスクの大きさに応じて優先順位をつけて調査・対応を行う方法)を推奨し、具体的な6つの手順を提示している。

(1)責任ある企業行動を方針と管理体制に組み込むこと。
(2)顕在的・潜在的な負の影響を特定し、リスクを評価すること。
(3)特定された負の影響を停止・防止・軽減するための策を実施すること。
(4)実施した対策の状況と結果を追跡し、評価すること。
(5)影響への対処方法を社内外に情報開示し、透明性を確保すること。
(6)被害が発生した場合、適切な救済措置・是正措置を提供、あるいは救済措置に協力すること。

 OECDのガイドラインは、法律違反の有無ではなく、社会や職場に与えた影響に着目する。企業がスキャンダルに直面したとき、有罪かどうかにかかわらず、信頼を守るための行動が求められるのだ。

 それゆえに、社内秩序を保ちたいときは、番組の降板や活動休止が選ばれることがある。信頼回復を目指すなら、コメントの発表や研修参加が使える。再発を防ぐには、外部調査や教育制度の見直しも必要になる。

 国分太一氏のように、世間への影響が大きい人物については、明確な処罰よりも、秩序と信頼をどう守るかが重視されるのだろう。

国分氏を社会から排除するような対応には問題がある

 しかし、処分だけで終わらせず、復帰の道を設計しておくことも重要である。

 OECDは、段階的で手続きを重んじた方法を推奨している。例えば、一定期間の活動停止や、本人による謝罪、研修の受講、関係者との合意形成を条件にすれば、復職も現実的になるだろう

 問題の対象者を社会から排除するのではなく、再び信頼を得る仕組みをつくることが求められているというわけだ。

 再発防止も、本人だけに責任を負わせるのではなく、組織全体の文化や体制に目を向ける必要がある。告発制度を整備したり、行動を定期的に点検する仕組みを設けたりすることが効果的だ。周囲の沈黙や黙認が不正の温床になることもあるため、職場全体が問題意識を持つことが欠かせない。