――今後の石油価格の上昇はどのように変化すると読んでいますか?
紛争は今のところ、原油相場に大きな影響を与えていません。が、停戦せずに万が一ホルムズ海峡封鎖が起きれば、原油価格は短期間で1バレル=150ドルを超える可能性もあります。ホルムズ海峡は世界の原油の約20%が通過するポイントですから。
中東情勢の見通しが立たないことで、世界経済の動向に不確実性が加わったことは確かです。原油価格が10%上昇すると、米FRBが重視するインフレ指標であるPCE(個人消費支出)物価指数のコア指数が0.04ポイント押し上げられます。
また、原油相場が1バレル当たり10ドル上昇すると、米国のGDP伸び率が0.1ポイント押し下げられます。インフレ率が再び急上昇する兆候が見られれば、FRBが今後数カ月以内に利下げをすることを正当化するのが難しくなるでしょう。
トランプはFRBに利下げを強く迫っていますが、パウエル議長はなかなか耳を貸そうとしません。アメリカではスタグフレーション(景気後退とインフレの同時進行)の懸念が強くなっています。
――トランプ大統領は就任以降、米国内の石油産業を鼓舞するような発言を繰り返していますが、今回のイラン問題で米国のエネルギー産業が復権すれば良いと考えているのでしょうか?
当然、考えているでしょう。足元の原油価格は落ち着いているように見えますが、イランとの対立や緊張がさらに高まれば、原油市場は供給リスクを懸念して、価格が上昇するでしょう。これは、コストの高い米国のシェール産業にとっては採算が合いやすくなり、米国内石油産業が復権する大きなきっかけになります。
トランプ大統領は米国第一主義を掲げて、国内産業の復活を政治的アピールポイントとして使ってきました。第1期トランプ政権でも、米国内のシェールオイルや天然ガスの開発を促進し、エネルギー自給率を高めることを国家戦略として推し進めました。
ですから、トランプが「イラン問題の緊張が米国のエネルギー産業にプラスになる」と考えていて、全くおかしくありません。
