自分にできることが何かあるのではないか。そこで行き着いたのが「おしごとりっぷ」のアイデアです。観光地の宣伝だけでなく、事業者と外部の働き手(旅行者)を結び付けることで、より実質的な地域活性化を図れると感じました。

 それまで情報通信と人材派遣で積んできたキャリアを生かせる事業ができると考え、2024年に独立起業しました。

──事業の立ち上げは順調でしたか?

木村 まずは受け入れ先の開拓でしたが、兵庫県の梨農家の方と出会い、JAの方をご紹介いただき、そこから市役所の担当部署、さらには地域の事業者の方……というように雪だるま式で縁が広がっていきました。現在では六つの自治体とのつながりができ、求人募集をされる事業者も徐々に増えています。

 一方、働き手については、大学にアプローチをかけ、六つの大学との関係が築けました。先生と話してゼミの場で説明会を開かせていただいたり、サービス案内チラシを設置いただいたりしています。

──ネットワーク構築も着実ですね。

木村 大阪産業創造館を活用することで、中小企業診断士や税理士などの士業関係者とのつながりが生まれました。それに加えて、大阪信用金庫さんのシェアオフィスに入居したことで、起業家同士の交流も深まりました。センター長が私のビジネスに合いそうな入居者を紹介してくれるため、とても心強いです。

 同じ入居者のアプリ開発会社、RelyonTripさまとは事業の親和性が高く、おしごとりっぷで旅行計画アプリ「SASSYU(サッシー)」を旅行者向けにご紹介させていただけることになりました。これを活用すれば、働き手(旅行者)は限られた時間内で地域を計画的に旅行できるので、非常によいご縁でした。

 旅行者に地域の魅力を知っていただくため、各地域のインフルエンサーとの連携を進めています。おしごとりっぷ上でおすすめスポットや地元の人気店などを発信できるスペースを設けており、ここで情報交換もできるようにしています。

──今後の抱負を教えてください。

地方の旅館や農家と「旅をしながら働く」人のマッチング支援を行い、近畿を盛り上げる「おしごとりっぷ」では近畿エリアの人材不足に悩む地域事業者を募集中

木村 最終的に実現したいのは、「旅先で働く」という新しい旅の形を一つのスタンダードにすることです。それができれば、さまざまな地域の魅力に気付き、地域で働いたり移住したりする方が増えていくと考えています。そのためには、地域とは近い距離で「働き手のニーズ」を捉え、訪れる人と迎える人をつなぐサポートをすることが大切です。当面は近畿地方を中心に、将来的には中四国や九州にまで広げていきたいと考えています。

(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2025年7月号掲載、協力/大阪信用金庫

事業内容:地域密着型の旅行・短期求人情報サービス「おしごとりっぷ」の運営
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