
【ハンブルク】その自動運転タクシーは、進路をふさいでいた配達車を慎重に避けようとし、そのまま対向車線に向かってしまった。
「最善の判断とは言えない」。ドイツ自動車大手 フォルクスワーゲン(VW) の自動運転車部門責任者クリスティアン・ゼンガー氏はため息をついた。このロボタクシーは同社が製造したものだ。
6月に実施したこの試運転は順調だったものの、かつて自動車工学で世界に先行していた欧州がいまや米国と中国の背中を負っている現状が浮き彫りになった。
米 アルファベット 傘下のウェイモは、米国で5年近く 完全無人のタクシー を運行している。深刻な事故を起こしたことはなく、現在は週25万回以上の配車を行っている。同様のサービスは中国各地でも始まっており、手掛けているのは百度(バイドゥ)など国内テック大手だ。
欧州は地場のテック大手が存在せず、規制も厳しいため、これまでは自動運転競争とは距離を置いていた。だが低成長の時期を経て、自動車産業の将来に向けてリスク分散とイノベーション促進に踏み出した。
ハンブルクは欧州のロボタクシー推進の中心地として台頭している。VWの電動ミニバン「ID.Buzz」特別仕様車およそ30台が、市内の混雑した道路を自動運転している。車体は同社の乗り合い配車サービス「MOIA(モイア)」のシンボルカラーである黒色とブロンズ色だ。
モイアの技術はまだテスト段階で、不具合が生じた場合に備えて人が運転席に座り、配車を予約できるのも従業員に限られている。数カ月以内に市内で一般向けサービスを開始する計画だ。