氷が溶けてきてぼんやりした
アイスコーヒーにならない方法
冷たい飲み物のおいしく感じられる温度はUCCによると5~11℃だそうである。もっとも温度で言われてもピンと来ないだろうが、要は結構キリッと冷たい方がおいしく感じられる。
西麻布で10年修行の後、神楽坂のとあるバーで約10年間バーテンダーとして務める安藤穂高さんによると、冷たい飲み物をおいしくするには氷の使い方が非常に重要だという。
氷を使って飲み物とグラスを短時間で冷やしきり、飲み物・氷・グラスの温度を近づけることで氷を溶けにくい状態にして、ダラダラと溶け続けて水っぽい味わいになるのを防ぐことができる。
そういえば私も、妻に知られるとおそらく飲み過ぎのかどで怒られるのであまり大きな声では言えないが、夏場は日に5杯くらいアイスコーヒーを飲むので、アイスコーヒーのおいしい状態については経験的に心得ているつもりである。
たしかに一番おいしいのは最初の入れたて、氷が丸々残ってコーヒーが濃く感じられる時で、氷が徐々に溶け出すと味がぼんやりしておいしさが失われていき、氷がすべて溶けてさらに全体がぬるくなっていると、もはやアイスコーヒーというより焦げ茶色のうっすら苦い罰ゲーム的飲料となる。
バーテンダーの安藤さんの指南によれば、家庭でも冷たい飲み物をおいしく頂く方法がある。
まずはアイスコーヒーである(以下麦茶なども同様)。氷をたっぷり、なんならグラスから少しはみ出るくらいまで入れる。次にコーヒーを氷に当てながら注ぐ(コーヒーをすぐに冷やしに行く構え)。そしてグラスに霜がつくくらいまでしっかりとかき混ぜて、コーヒーとグラスを冷やす(氷の温度に近づける)。これで完成だ。めちゃくちゃうまそうである。
コーヒーを氷に当てた時聞こえる「パキキッ」という氷の雄叫びや、氷やグラスらが液体の中で触れ合う音は冷たい飲み物界隈における福音であり、それを想起させる工程である。「グラスに霜がつくくらい」とは自分が家庭でやる分にはなかなか意識しないポイントであり、それゆえに実際やってみたらうまさが約束されそうな気配がある。