
米実業家イーロン・マスク氏率いるビジネス帝国の「太陽」が再び燦然(さんぜん)と輝いている。やけどには注意が必要だ。
マスク氏は、浪費する共和党を罰するため独自の第3政党を立ち上げる政治革命をまだ切望しているようだが、同氏の企業で最近、幹部らが相次いで辞職したことは「ボス」の復活を物語っている。
マスク氏は9日、X(旧ツイッター)の最高経営責任者(CEO)を退任するリンダ・ヤッカリーノ氏に対し、「貢献に感謝する」と告げた。マスク氏は別れの言葉を巧みに使う。
ヤッカリーノ氏は2年間の激務を経て退任を発表した。同氏は主に、営業活動を嫌っているとみられるマスク氏のために広告事業の立て直しを担っていた。6月下旬には、米電気自動車(EV)大手テスラの北米と欧州の販売・製造部門責任者だったオミード・アフシャー氏が退社したことも明らかになった。
ヤッカリーノ氏とアフシャー氏の離職は、マスク氏の元部下の間で言われてきた格言を裏付けている。それは「気まぐれなリーダーの下で生き残るには、太陽(マスク氏)に近づき過ぎるな」というものだ。
マスク氏が政府効率化省(DOGE)でトランプ政権のために週120時間働いていた時は、もっと簡単に「日陰」を見つけられた。同氏のDOGEでの任期は5月末に終了した。今やマスク氏は燃え盛っている(常に100%集中しているわけではないが)。
このところの相次ぐ幹部の離職は、マスク氏とその企業の営業部門との複雑な関係も浮き彫りにしている。マスク氏は未来のビジョンを売り込む究極のセールスマンだ。しかし、広告枠であれ電気自動車であれ、現在の在庫を売る責任者を次々と入れ替える傾向がある。
そして最近のマスク氏は、人工知能(AI)チャットボット(自動会話プログラム)や自動車が自ら売れていくかのように振る舞っている。
広告業界関係者の間では、ヤッカリーノ氏がもっと早く退任するのではないかとの声もあった。マスク氏の下では長くは続かないと内々では予想されていた。ヤッカリーノ氏は2023年、米娯楽・メディア大手NBCユニバーサル(NBCU)の安定したポストを離れ、業界を驚かせた。