従業員の元気が、会社の好循環を生んでいく
弥生は、昨年(2024年)10月に、Google Japan出身の武藤健一郎さんを新社長(代表取締役 社長執行役員 兼 最高経営責任者)に招き入れた。そして、武藤社長は、弥生で取り組みたいこととして、就任時に次の3つを挙げている。
(1)社員一人一人がもっと「成長」を意識する空気づくり
(2)心理的安全性の高い組織づくり
(3)社内の意思決定プロセスの迅速化
そして、弥生のいちばんの強みは、「お客さまやパートナーとの信頼関係」だと明言した(*5)。
*5 【「変わる弥生、変わらない信念」新社長が語る、弥生のこれから】(弥生株式会社 公式note/2024年11月6日)
弥生が発信している情報や森嶋さんの言葉から、「信頼関係」はクライアントやパートナーとの間だけではなく、従業員同士でも成し得ていることがうかがい知れる。
改めて、“弥生の魅力”を森嶋さんに聞いた。
「“人”です。人の温かみをいろいろなシーンで感じることができます。いま、世の中全体が変化の激しい時期ですけど、弥生には、変化を恐れずにチャレンジしていく、進んでいく体制があります。『まず、誰かに聞こう』という姿勢が多くの人にあって、物事が柔軟に変わっていく。管理職や上司の“聞く耳”が、人の魅力や温かみを生み出しているとも思います」
職場の心理的安全性に欠かせないのは、上司と部下、同僚間の適切なコミュニケーションだ。
「コミュニケーションがとりやすく、健康的で働きやすい環境をつくることが人事総務チームの目標」と森嶋さんは言う。そのために、人事総務部は、福利厚生のためのヒヤリングをおこなったり、全社規模で「満足度調査」を実施したりして、従業員のニーズを拾い上げている。
インタビュー場所(ミーティングルーム)とリフレッシュルームを行き来するなかで、森嶋さんに好きな絵本を尋ねると、『もこ もこもこ』という作品を挙げてくれた。『もこ もこもこ』は、詩人・谷川俊太郎さんと、画家・元永定正さんの、文と絵のユニークなコラボレーションが印象的で、子どもも大人も楽しめる作品だ。擬音語や擬態語を彩るカラフルな絵が、「次のページでは、どうなるのだろう?」という予測不能なおもしろさをもたらしていく。それは、弥生を転職先に選んだ理由のひとつが「自宅に近かったから」、人事総務部の異動は「希望ではなく、びっくりした」と正直に語る、森嶋さんらしいチョイスだった。森嶋さんは、自分で決めた道を独善的に進むのではなく、目の前に広がる景色を、周りの人たちと一緒に楽しんでいる。
コロナ禍を経て、2020年代も半ばとなり、総務や人事といったバックヤード系の業務は多忙を極めている。さまざまな案件に追われ、時間を効率的に使うことを余儀なくされ、枠からはみ出さないようにしながら、仕事に向き合っている人が多いだろう。コスパ、タイパの時代では、人と人をつなぐコミュニケーションもないがしろになりがちだ。
森嶋さんは、働く仲間たちとの、かつてのランチ会でのつながりが、いまでも活きていると言う。一度かたちづくられた信頼関係は尊い。
「私は、人が好きなんです。いろいろな人からいろいろなことを相談されたりして、『毎日がドラマだなぁ』と思うことがあります。話し相手として頼られるのがうれしいですね。人にとって、褒められるのと同じくらい、頼られることは、働くこと、生きることのモチベーションになりますから」
弥生の「私たちの使命(Mission)」は、「中小企業を元気にすることで、日本の好循環をつくる。」――そのために、森嶋さんたち総務人事のスタッフは、「職場を元気にすることで、会社の好循環をつくる」ことを実践している。