ブラジル経済は関税交渉“勝利”も政策金利「15%」で消費不振、内需減速でも株高・レアル堅調は続くかPhoto:PIXTA

インフレ再燃を受け、ブラジル中央銀行は利上げを重ね、政策金利は15%と約20年ぶりの高水準に引き上げられた。個人消費は低迷気味だが、トランプ関税の影響はそれほど大きくはなく外需は堅調である。足元の景気・企業マインドも改善傾向にある。足元はインフレが落ち着きつつあることもあり、株価指数は最高値を更新した。2026年以降のブラジル経済の行方を検証する。(第一生命経済研究所主席エコノミスト 西濵 徹)

インフレ再燃で
政策金利15%に

 ブラジルでは、2022年初めを境に鈍化したインフレが24年以降再び加速に転じたことを受けて、中央銀行は24年9月に利上げに動くとともに、25年6月まで7会合連続の利上げを実施した。

 これにより、政策金利(Selicレート)は15.00%と高水準で推移している。この背景には、24年末以降のインフレ率が中銀目標(3±1.5%)を上回る状況で推移するなど、インフレが警戒されたことがある。

 よって、近年のブラジル経済は個人消費をはじめとする内需が成長のけん引役となってきたものの、物価高と金利高の共存が内需の足かせとなることが懸念される状況に直面してきた。

 さらに、ブラジルはトランプ米政権の関税政策に翻弄されてきた。ブラジルは米国にとって貿易黒字国であり、当初は相互関税の税率を一律分と同じ10%とした。しかし、25年7月にトランプ大統領は税率を50%に大幅に引き上げる方針を明らかにした。

 その理由について、トランプ氏は「自由選挙と米国人の基本的言論の自由に対する攻撃」と「不公正な貿易慣行」を挙げた。とはいえ、実際にはトランプ氏と良好な関係にあるボルソナロ前大統領が国家転覆の計画を理由に起訴されたことが影響したと考えられる。

 次ページではトランプ関税のブラジル経済への影響も含めた景気動向、通貨レアル相場の動きについて検証する。