「AI投資バブル」の終わりは近い?鉄道・電化・ITバブルの教訓から読むその兆候とタイミングPhoto:PIXTA

鉄道、電化、ITバブル――技術革新は成長を生む一方で、資本市場の熱狂を招き過剰投資と株価の急落を招いてきた。歴史を踏まえ、AIブームの持続性とリスクを検証する。普及のS字カーブ、価格下落、デット増、投資減速に先行する株価ピーク、崩壊後の景気悪化という五つの教訓から、転換点は近いと読む。(BCAリサーチ チーフストラテジスト ピーター・ベレジン 構成/同社日本顧問 石原哲夫)

技術革新は投資のブームを招き
そのブームは崩壊する

 技術革新の歴史は、資本市場と実体経済の相互作用を通じて社会構造を変革してきた。鉄道、電化、ITバブル(インターネットブーム)は、いずれも経済成長の原動力となり、同時に過剰投資も引き起こした。

 AIの投資ブーム、つまり「AIブーム」を理解するには、これら過去の投資サイクルがどのように盛り上がり、そして崩壊したかを振り返る必要がある。

 ここで取り上げたすべての投資サイクルはブームのあと、崩壊している。これらの事例を分析することで、AIブームの持続性とリスクを理解する手掛かりが得られるだろう。

 まず、過去の投資サイクル、投資ブームを振り返っていく。

 最初に取り上げるのは、鉄道投資ブームである。

 19世紀初頭、英国で鉄道技術が実用化されると、資本市場は急速に鉄道株に資金を集中させた。鉄道網の拡大は物流コストを劇的に低下させ、都市と地方の経済統合を促進した。石炭や鉄鋼産業は鉄道需要により急成長し、雇用も拡大した。

 鉄道は単なる輸送手段ではなく、産業革命の加速装置となった。鉄道建設は土木技術の発展を促し、橋やトンネルの建設技術が進化した。鉄道の駅周辺には商業施設が集積し、都市構造が変化した。鉄道網の整備に伴い、農産物や工業製品の市場が広がり、地域経済の閉鎖性が解消された。

 しかし、鉄道会社の乱立と投機的資金流入はバブルを形成し、1840年代半ばに崩壊した。鉄道株は暴落し、多くの投資家が破産した。崩壊後、鉄道業界は統合と規制強化を余儀なくされ、資本市場は長期的な信頼回復に時間を要した。この事例は、技術革新がもたらす利益とリスクの両面を示す典型である。

 次ページでは、鉄道投資ブーム以降の二つのブームを取り上げ、そこから得られた教訓を基に、AI投資ブームの行く末を予測する。