「米韓台」連合が独走するAI半導体チップ業界
現在、世界経済の牽引役で最も重要なものの一つは、間違いなくAIだ。そのAIに必要な半導体産業において、AIチップの供給能力が周囲に決定的影響を及ぼしている。優位なのは、エヌビディア、韓国のSKハイニックス、TSMCだ。この3社は協業体制を敷いていて、「NST連合」と呼ぶこともできる。
演算を行う画像処理半導体(GPU)市場では、エヌビディアの寡占が鮮明だ。現在、GPU市場で、エヌビディアのシェアは94%に達した。2位のAMDは6%、3番手にインテルはいるが極めて0%に近い。
エヌビディアは、SKハイニックスが開発した広帯域メモリー(HBM)でデータの転送速度を上げている。韓国のサムスン電子はDRAM市場トップの座をSKハイニックスに明け渡した。
TSMCは、回路線幅3ナノメートル(ナノは10億分の1)のチップを製造する、最新ラインで優先的にエヌビディアのチップを製造している。SKハイニックスもTSMCと協業し、業績は好調だ。4~6月期、世界のファウンドリー市場におけるTSMCのシェアは70.2%に拡大した。サムスン電子は7.3%、中国のSMICは5.1%にとどまる。
エヌビディアを筆頭に米国の半導体産業は、今のところ、中国に対する優位性を維持している。中国のディープシークは、ファーウェイの半導体を使って新しい推論モデルの開発を試みたが、失敗したようだ。エヌビディアのチップ設計力や、CUDAという開発ソフトウエアの使い勝手の点で、中国企業の弱点は残る。
ただ、米中の差は着実に縮小している。エヌビディアのチップから中国への供給が止まった後も、中国のAI関連分野では新しいモデルの開発が加速した。アリババのAIチップ完成に関する報道も、中国の半導体業界の成長が加速していることを示している。
AIの本格的な開発にエヌビディアのH20チップは必要とされるが、なければないで開発できないわけではない。8月中旬、中国政府はH20チップを排除するよう関連企業に指示した。安全保障に加え、中国が自国の製造技術を向上し、利用範囲を増やす狙いがあるだろう。