ファーウェイが牽引する中国の半導体産業
中国の半導体関連企業の成長が加速している典型例の一つが、産業スパイの摘発だ。8月、台湾の検察当局が、TSMCの2ナノプロセス技術(年内に稼働予定)を不正取得した疑いで社員3人を逮捕・起訴した。なお、日本企業の名前も挙がっていたようだ。
最先端のチップ製造技術は、台湾の宝だ。技術流出のインパクトは計り知れない。すでにTSMCは、3ナノの生産ラインで中国企業の装置を排除した。中国への技術流出への危機感はかつてなく高い。
一方、中国は半導体分野の育成をより重視し始めた。中国政府は、2027年までに国内データセンター用の半導体の70%超を、自国産にする計画。北京市は100%国産を目指す。
計画の中核的存在はファーウェイだ。同社は、半導体設計・開発企業のハイシリコンを傘下に持っている。ハイシリコンは、SMICの汎用型の製造ラインを駆使し、5ナノレベルのチップを開発した。
ファーウェイは、AIチップ「アセンド(Ascend)」シリーズの開発を急いでいる。電力消費が多い課題はあるものの、演算能力はエヌビディアの上位機種に匹敵するようだ。
ファーウェイは米国の制裁に対抗するため、中国国内で半導体供給を完結する産業の育成を急いで進めている。半導体の素材分野でファーウェイが重視するのが、珠海基石科技という新興企業だ。珠海基石科技は日韓米の半導体関連部材メーカーや化学品メーカーから人材を集め、研究開発と製造技術の向上に取り組んでいる。
同社は製造装置分野で、新凱来技術(SiCarrier)などとの関係も強化中だ。新凱来技術の特徴は、露光装置や研磨装置など前工程で使われる、精密機械を網羅的に開発・供給していることだ。政府からの産業補助金や生産施設用地の提供、海外人材の確保などで、開発スピードは速くコストも低い。
ファーウェイはSMICとの関係を深め、アセンド・チップの供給増や性能向上に積極的に取り組んでいる。既存の装置、規制を潜って入手した最新装置、チップ、知的財産を駆使し、微細化やチップの積層を実現する製造能力を目指している。