7月31日の金融政策決定会合を終え、記者会見する日本銀行の植田和男総裁7月31日の金融政策決定会合を終え、記者会見する日本銀行の植田和男総裁 Photo:JIJI

日本銀行の今後の利上げ時期を占う上で、日銀が語る「関税」と「コメ」の2つのナラティブに注目したい。コメなどの食品インフレに対する日銀の認識は変わりつつあるが、利上げの決め手となる可能性は引き続き低い。関税引き上げが来年の春闘に与える影響を見極めたい日銀は、早くても利上げを12月まで待つと予想する。(SOMPOインスティチュート・プラス エグゼクティブ・エコノミスト 亀田制作)

利上げ見送り濃厚の日銀9月会合の注目点
「関税とコメ」2つのナラティブの行方

 次回の日本銀行の金融政策決定会合は9月18・19日に開催されるが、金融市場や筆者を含む大半のエコノミストは「利上げ見送り」を予想している。その通りになれば、今回は展望レポートの公表もないため、注目材料は会合後の植田和男総裁の記者会見だけとなる。

 その総裁会見も最近は発言内容に変化が乏しく、そこから先行きの政策運営に関する新しいヒントを得るのは正直困難なのだが、それでも注目しておきたいポイントはある。

 それは、「関税」と「コメ」という日銀が語る2つのナラティブについて、植田総裁の答弁から現状認識の変化やリスクバランスのシフトがうかがわれるかどうかである。

 なお、足元では石破茂首相の辞任表明に伴い政局が金融政策に影響するとの見方もあるが、筆者は、日銀の基本的な政策スタンスが新しい首相が誰かによって変わるとは考えていない。

 そこで次ページでは、関税とコメを巡る2つのナラティブとその現状を確認してみよう。