日銀・植田総裁も十分“ハト派”、高市政権と「円安・インフレ回避」利害一致で衝突はなし!?Photo:SANKEI

日銀は12月ないし来年1月に利上げ!?
植田総裁が語った「三つの注目点」

 日本銀行は10月末の金融政策決定会合で、政策金利(オーバーナイト・コールレート)を0.5%に据え置いた。

 しかし、会合後の植田和男総裁の会見では、近い将来の利上げを念頭に置いたような発言も少なくなかった。日銀は次の12月会合あるいはその次の来年1月会合で、0.75%への利上げを実施する可能性が高い。

 とくに注目された植田総裁の発言は次の3点だ。

 第一に、植田総裁は「経済・物価見通しが実現する確度は少しずつ高まっている」と述べた。日銀は以前から「経済・物価見通しが実現していけば利上げする」という考え方なので、見通し実現の確度が高まればその分、利上げは近づく。

 第二に、植田総裁は「米国経済の下振れリスクは7月に見ていたころよりやや低下した」と語った。これは大きな変化だ。日銀がこれまで利上げに慎重だった最大の理由は、トランプ関税の影響などによる米国経済の下振れリスクだ。そのリスクが低下したということなら、近い将来の利上げのハードルは下がったことになる。

 第三に、さらに重要なメッセージとして、植田総裁は「春闘の初動のモメンタムを確認したい」と述べた。「初動のモメンタム」というのは初めて使われた言葉であり、利上げのタイミングを巡り重要な意味を持つ。

 2%物価目標の達成に向けて日銀は来年の春闘を重視しているが、具体的な賃上げ率の数字を待つなら、利上げは早くても3月になってしまう。「初動のモメンタム」とは企業や労働組合の交渉姿勢、あるいはその背景となる企業収益の動向を指すものであり、それを確認するだけなら12月、1月の利上げは十分ありうるということになる。

 以上は経済・物価などを巡る要因だが、積極財政・金融緩和路線の高市政権との関係や政権の利害からも、追加利上げで政府と日銀が衝突する可能性は小さいと考えられる。