
関税交渉合意は利上げに前進だが
物価上昇率は8カ月連続で3%超え
難航していた日米関税交渉が合意に達し、その後も、合意内容について日米間で見解の相違が出るなどの問題は起きたが、利上げ再開の道はかなり開けてきた。
すでに引き上げられていた部分も含めて高関税が日本や世界経済に与える影響は今後確認していく必要があり、日本銀行は、7月の金融政策決定会合で4会合連続の政策金利据え置きを決めた。それでも、改訂した展望レポートの経済・物価見通し実現の確度は、4月の前回展望レポートの際よりも高まったと見ている。
一方で、トランプ関税が一時懸念されていたほど経済に悪影響を及ぼさないのではとの見通しも出てくる中、市場などでは、利上げ再開に懐疑的な見方から、一転して日銀はすぐに利上げを再開すべきだとの意見も広がっている。
円安が進展して物価上昇圧力を高めていることや、直近公表の7月の消費者物価上昇率が前年同月比3.1%増と8カ月連続で3%超えとなり、物価安定目標である2%を超える物価上昇が3年以上も続いていることから、金融政策がビハインド・ザ・カーブに陥っているのではないかという批判が聞かれるようになってきた。
このため、次回9月の金融政策決定会合に向けて、市場では利上げ観測が高まる可能性がある。
しかし、日銀は利上げ再開に向けて準備を進めるものの、円安や消費者物価指数の高い伸びを理由に政策金利を引き上げる考えはなさそうだ。それを行えば、金融政策正常化のプロセスにマイナスと考えているからだ。
現状では、展望レポートの経済物価見通しの達成確度の高まりを確認しながら、次々回となる10月の会合で利上げ再開を決める可能性が高いと筆者はみている。