日銀・植田総裁Photo:Bloomberg/gettyimages

日本銀行は10月の金融政策決定会合で、6会合連続で政策金利を据え置いた。高田創・田村直樹両審議委員は前回に引き続き、利上げを主張し反対票を投じた。据え置きの背景には、就任したばかりの高市政権との「間合い」がまだ定まらない中での政治的配慮がある。「トランプ関税」の影響を十分確認し、2026年春闘の「初動」をチェックでき、補正予算成立後である来年1月会合が、最も自然な追加利上げのタイミングになる。(マーケットコンシェルジュ代表 上野泰也)

高市政権との「間合い」未確立で
執行部は10月利上げを封印

 日本銀行は10月29・30日に開催した金融政策決定会合で、政策金利を6会合連続で据え置くことを、7対2の賛成多数で決定した。前回9月会合で即時利上げを主張した高田創・田村直樹両審議委員が、今回も反対した。

 一部マスコミによると、追加利上げを近く行うのが妥当という雰囲気が、日銀政策委員会内に漂っているという。植田和男総裁が率いる執行部寄りの姿勢をとっている審議委員の中から上記2人に追随する動きは出てこなかった。

 だが、植田総裁が高市早苗首相に追加利上げの必要性を説明し、容認あるいは黙認をとりつけることができるならば、追加利上げが全員一致で決まる素地があると、筆者はみている。

 1月に利上げしてからのインターバルは、すでに9カ月という異例の長さになった。けれども、「政治との間合い」がまだ定まらないタイミングである10月の利上げという選択肢を、日銀執行部は早い段階で諦めていたようにみえる。

 自民党総裁選では「アベノミクス」を信奉する高市氏が勝利し、その後首相に就任した。1年前に「利上げはアホ」と述べ、日銀の利上げ路線を強く批判した政治家である。

 むろん、安倍晋三元首相が「アベノミクス」に着手した当時とは、為替相場の状況が真逆であり、「過度の円高によるデフレ」から「過度の円安によるインフレ」へと、焦点は切り替わっている。

 現下の情勢で日銀の利上げ路線を全否定するわけにいかないことは、高市首相も理解しているはずである。政治が強引に日銀の利上げを「封印」してしまうと、円安が加速して、物価高が一層深刻になりかねない。

 高市氏の経済ブレーンである本田悦朗・元内閣官房参与はマスコミのインタビューで、日銀によるあと1回の利上げは容認できることを示唆した。

 日銀は現実問題として、新政権との意思疎通を十分行い、政治の「間合い」が定まった状態をつくり上げる必要がある。首相指名選挙・組閣が後ずれして10月21日になった後は、高市首相の外交日程がめじろ押し。首相と植田総裁との初の直接会談も実現していない中で、日銀が10月会合で利上げを強行するわけにはいかなかったと考えられる。

 では、次なる利上げはいつになるのか。次ページでは、植田総裁の発言や高市政権のスタンスを検証し、予測する。