高岡浩三の「企業の通信簿」#6Photo:Bloomberg/gettyimages

「失われた30年」で賃金も世界に大きく後れを取る今日の日本経済の惨状を招いたのは、日本の大企業やその経営者だ。元ネスレ日本CEOの高岡浩三氏が、最新決算などを踏まえて日本の大手企業を本音で評価した『企業の通信簿』。今回は、同書から一部抜粋し、日本の外食産業の課題に迫る。日本発の外食チェーンと比べて、マクドナルドとスターバックスが稼げる理由と、世界チェーンに成長できる可能性を秘めた日本の外食産業とは?

日本の代表的な外食チェーンと比べ
利益率が高いマックとスタバ

 国内の外食産業で利益率の高い企業の双璧はスターバックスとマクドナルドです。すかいらーくやスシロー、吉野家など日本発の代表的外食チェーンが5%前後であるのに対し、米スターバックスとマクドナルドは“優良企業最低ライン”の10%を超えています。いずれも外資です。

 スターバックスとマクドナルドが日本で高い利益率を誇っているのは、いくつかの要因が複合的に作用しているからだと考えられます。

 スターバックスの場合、高単価戦略、ブランド力、メニュー戦略、効率的かつ質の高いオペレーションなどがその要因です。スターバックスは高品質なコーヒー豆や洗練された居心地のよい店舗空間を提供することで、競合他社よりも高い価格設定を可能にしています。それがブランド力につながっています。「スタバ」というブランドは、高品質なコーヒーを提供するだけでなく、おしゃれなカフェ体験を提供する場所として認知されています。このブランド力により、多少高くても利用したいという顧客心理を生み出しています。

 メニュー戦略も見逃せません。期間限定の新商品や地域限定メニューなどを展開することで、顧客の来店頻度を高め、購買意欲を刺激しています。さらに、徹底した品質管理や効率的なオペレーションにより、コストを削減して利益率を高めています。利用したことのある方ならご存じのとおり、スタバの接客は群を抜いています。