自分のとらえ方や行動次第で、困難をチャンスに変えることはいくらでもできると私は信じています。

重要な決断に直面したとき
日々のメモが助けてくれる

 2021年10月に福岡ソフトバンクホークスの監督を退いてから、3年以上が経ちました。解説やイベントで球場に足を運ぶたびに、どうしても当時の選手たちの様子や表情が気になってしまいます。

 監督時代の選手約90人、それぞれにメモを取り、スケッチブックを開き、整理をしてきた過去があるからでしょうか、今でも親心に近い感情で気にかけてしまうのです。

「選手には1年でも長くユニフォームを着てほしい」

 監督に就任した当初は、その気持ちが空回りしてしまい、自分の頭の中が整理できていない状況で選手と接し、逆に戸惑わせ、溝を生んでしまいました。その際、選手のバックグラウンドや物事の背景を知ることの大切さに気づき、メモを取るようになったのです。

 当たり前ですが、メモを取って整理をすればすべてがうまくいくわけではありません。メモをし、整理をしてシミュレーションをしても失敗はします。悩むことや大変な状況にも何度も直面します。

 しかし、書くことで頭の中を整理し、自分自身と向き合い、冷静に状況を分析することを積み重ねていくからこそ、思考に深みが生まれると思っています。

 何事も一朝一夕にはいきませんが、継続することで見えてくること、気づくことがたくさんあります。

 プロ野球という勝負の世界はもちろん、仕事や人生も選択と決断の連続です。

 その一瞬一瞬の決断に備えて、準備ができていたかどうか。後悔のない選択と決断のために、成功する確率を上げるために、メモというのは大切な習慣だと、あらためて感じています。

 しっかりと整理をし、準備をして、納得をしたうえでの決断は、どんな結果であっても必ずその後の人生の糧になるはず。たとえすぐに結果として表れなくても、継続して取り組んでみてほしいと思っています。