日本列島は梅雨のシーズンに突入し、ジメジメと蒸し暑い天候が続く。そんな中、どのような装いでビジネスシーンを乗り切るか、毎年悩ましいところだが、今や季節の風物詩としてすっかり定着したのが、「クールビズ」だ。
そもそもクールビズは、環境省が先陣となって2005年に提唱しはじめたもの。今年で9年目を迎えるのだが、6月1日からは「スーパークールビズ」と称して、企業へのさらなる普及を啓発している。
環境省は今年の取り組みとして、軽装を推奨する「クールファッション」や効率的な働き方を考える「クールワーク」、設備や植物などで快適さを目指す「クールハウス」、打ち水や冷却シートなどで涼をとる「クールアイディア」、みんなで涼しい空間に集まる「クールシェア」の5点を強化している。中でも女性へのクールビズ指南は一部で物議を醸すこともあったが、それだけ消費者のクールビズへの関心が高いことを示しているとも言えよう。
さて、男性ビジネスマンのクールファッションに目を転じてみれば、例えばアロハシャツやポロシャツといったカジュアルなスタイルを想像しがちである。しかし、成熟したクールビズの波はさらに進化を遂げ、今年は「きちんと感」を演出する装いが主流になっているという。
東急百貨店 MD統括本部 紳士服・スポーツ部 メンズブティック・ビジネスクロージング課長で、主に紳士服のバイヤーを務める大坂洋介氏は、「涼しさの中にも礼節をわきまえ、その上でおしゃれ感をプラスしたスタイルが今年は増えています」と話す。
その1つが「カラー」だ。例えば淡いブルーやオレンジといったカラーのコットンパンツや、ベルトと靴をボルドーカラーで統一させるなど、少し遊び心のある色遣いが今年流。
さらには、今年らしい「素材感」にも注目したい。麻のジャケットやシャツ、軽量で透け感のある織りのネクタイ、吸汗・吸熱・速乾作用のある涼感加工を施したシャツやネクタイ、襟のデザインにこだわり、さらには汗じみ防止の機能を持つビズポロなどが主流だという。「ベーシックでありながら、なおかつ少し踏み込んだおしゃれで、周囲と差を付けたいというお客様が多くいらっしゃるようです」(大坂氏)。
ちなみに、回復基調にある景気と歩調を揃えるように、同社でも客単価は上がっている。スーツ単価は約10%程度アップ。また約1万円前後とお手頃になった麻のシャツなどは2~3枚まとめて購入し、多彩なコーディネートを楽しむ人が増えているという。
お決まりのスーツという〈武装〉を脱ぎ捨て、ある程度の自由が許容される夏の軽装をまとう時こそ、男の真のセンスが試されるというもの。今年風のスーパークールビズで、きちんと、おしゃれに、そして涼やかに、この夏のビジネスシーンを乗り切りたいものだ。
(田島 薫/5時から作家塾(R))