
トランプ政権の政策不確実性とFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げでドル安圧力が強まるなか、金価格の最高値圏推移が追い風となり南アフリカの通貨ランドは堅調だ。南アの漸進的利下げでも実質金利は高止まりして、資金流入を支える。足元のGDP(国内総生産)は持ち直すが、対米関税や投資停滞など実体経済の弱さが残り、市場との乖離(かいり)には警戒を要する。(第一生命経済研究所主席エコノミスト 西濵 徹)
金高・ドル安が追い風
南ア通貨ランド相場は堅調
このところの金融市場においては、トランプ米政権の政策運営に対する不確実性に加え、FRBの利下げ実施も追い風にドル安が意識されやすい展開が続いている。
また、世界の分断の動きを反映した米ドル離れの動きもドル安を促しているほか、米ドル離れにより金に対する需要も高まっている。その結果、足元において金の国際価格は上昇の動きを強めるとともに、最高値圏で推移する展開をみせている。
こうしたなか、折からのドル安に加え、金の国際価格が上昇の動きを強めていることも追い風に、南アフリカの通貨ランド相場は堅調な動きをみせている。
なお、南アフリカは2000年ごろまでは世界最大の金産出国であったため、金融市場においては金価格とランド相場の連動性が意識される展開が続いてきた経緯がある。
ただし、その後は表層の鉱脈の枯渇に加え、生産コストの上昇、長年にわたる電力不足といった問題を理由に産出量は低下しており、昨年時点では世界9位にとどまった。
同国における金の埋蔵量は依然として世界有数の水準にあるものの、上述した要因が生産拡大を困難にしており、結果的に産出量が増えにくい状況にある。
次ページでは、そうした状況下での南アフリカ経済の動向を分析していく。