ただ、これを完全な正として結論づけることに研究チームは慎重である。データの用い方や捉え方によってまた違った結論が導かれる可能性は大前提としてあるし、そもそもこの結果にもゆらぎは潜在している(事故の報告不足の可能性や乗り物の使用方法の違いによって生じるデータ比較の公平性不足など)。
調査の対象になった電動スクーターは686件だったのに対し、電動自転車は35件で、数が少ないのでまぎれやブレが当然想定される。ただ研究チームはデータの比較検討のプロセスを鑑みて「統計的に有意」と結論した。
電動キックボードの安全性が過小評価されていたことを示すこのレポートをきっかけに、従来の価値観にむやみにとらわれることのないさらなる研究が期待される⋯⋯という姿勢でしめくくっている。
利用者のマナーの悪さも問題視
「そこに停めたら通行の邪魔!」
電動キックボードが危険視されていたのは、データによっては「事故率が高い」と示されてきたからにほかならないが、別の要因もいくつか考えられて、その一つに電動キックボードの事故は怪我が重症化しやすいことが挙げられる。
イタリアのある病院では1年間の電動キックボードの事故を記録したところヘルメットの着用率は0.7%だった。ヘルメットの低い着用率は怪我の重傷化と無関係ではあるまい。
電動キックボードの事故件数は全体の中で一部であっても、そうした目立ち方をするとどうしても「電動キックボードは危険」というイメージが広がる。
また、利用者のマナーの悪さも各都市で問題視されている。電動キックボードが通行の邪魔になるところに停められていたり、禁止された歩道なんかをすごいスピードで走って歩行者をおびやかしたりしてだいぶ嫌がられているようである。
一昨年ローマに行った時、レンタルキックボードが自由奔放に利用されていて歩道のすごいところに乗り捨てられているのを見て、「イタリアはおおらかだなあ」などと観光客の脳で微笑ましく見ていたが、どうやら現地では社会問題だったようである。