おじさんがそれを知らなかったのはおじさん本人のせいというより、「歩道走行禁止」とだけ広めて歩道走行が可能なモードの存在について周知を充分に行えていない政府と企業の責任だと思う。

 が、問題は「LUUPがなんかしてる→正義の名の下に怒鳴りつけちゃろ!」というおじさんを容易にうんでしまっているくらい、レンタル電動キックボードに関する感情が芳しくないということである。

危険な運転ばかりがクローズアップ
実態とはかけ離れている?

 自分がかつてユーザーだったから他のユーザーのマナーも気になって注視するようになった。たしかに信号を無視したり歩道をうねうね進んだり、危険な運転をしているユーザーを街中で見かけはするが頻度はかなり低く、マナーとルールがよろしいユーザーの方がおそらく圧倒的に多い。

 しかしネットだと傍若無人な運転をするLUUPの動画が色々出回っていて、そこでだいぶマイナスイメージを稼いでいるようである。

 乗り物ごとのイメージというのは確実にある。独断と偏見を承知で述べるなら、LUUPは垢抜けた若者かファッションにいくらか配慮している中年男女、新しいガジェットが好きそうなおじさんなどが中心に利用しているイメージだ。

 ドコモの赤いシェアサイクルは子育てしているお父さんとかちょっと生活感のある人、LUUPと重なる路線でさらに「ワイルド・イケイケ」の方向に推し進めたのが太いタイヤがトレードマークのモペットで、こちらは都心部や繁華街を中心に邪悪な運転をする様子がいくつも投稿されている。

 先日タンクトップからタトゥーをのぞかせた若い男性がモペット(原動機付自転車)にまたがり、代々木駅付近で車道を我が物顔に危なっかしく走っていた。

 投稿されている動画の影響で新宿が危険モペットの聖地だと勝手な印象を抱いていたので、「やっぱり代々木(新宿から1駅)くらいまで来るとこんな感じなのか」と見ていると、そのモペットは案の定タクシーからププーとクラクションを鳴らされ、若者がブチギれてタクシーを通せんぼし「調子に乗るな」的なことをしつこく夜の街で叫んでいた。

 あれを見て私は「モペット(しかもタトゥー)ってやっぱり!」と思わざるを得ないわけである。

 しかしモペットもよく観察すればきちんと交通法規を守って運転しているユーザーも当然ながらいる。だが「モペットは危ない」という先入観や「確定一歩手前の思い込み」の状態があって、そこで私が目撃したような事例に出くわすと、思い込みが正しかったことが証明されて、かくして思い込みはその人にとっての真理へと昇華される。