この図は、人びとが「個々人のやりたいこと」と「社会への迷惑」のどちらを優先するか尋ねた質問の回答です。調査を行ったのは生協総合研究所で、2023年に日本に住む25歳から54歳の男女、1万1008人からデータを集めました。
質問のさいには、AとBという対照的な文章を並べ、回答者の意見がどちらに近いか尋ねています。図は「A 法に触れるか触れないかに関係なく社会に迷惑のかかることはやらない方がよい」「B 社会に迷惑がかかっても個人のやりたいことを優先した方がよい」というふたつの文章をもとに、回答者の意見を尋ねた結果です。
結果を見ると、「社会に迷惑がかかっても個人のやりたいことを優先する」と考える人より、「社会に迷惑のかかることはやらない方がよい」と考える人のほうが、圧倒的に多いことがわかります。
「Aに近い」「どちらかといえばAに近い」の合計は、9割近く(88.4%)になります。これだけ人や社会に対する迷惑を意識していれば、自由な決定はなかなかできないでしょう。
なぜ日本人は「人の目」を
気にしてしまうのか
そもそも、日本人が人びとの目を気にしたり、自己主張を控えたりする傾向は、たびたび指摘されています。そうした人たちにとって、自己決定はリスクにもなります。自らの決定が周りに受け入れられない可能性があるからです。
最近、私が担当しているゼミの教室で、つぎのような光景が見られました。
だいたいどこの教室でも同じだと思いますが、年度の初めにはメンバーが自己紹介を行います。この自己紹介が苦手な人が、毎年一定数はいます。「紹介」として主張した自己が周りの人に受け入れられるか、浮いた感じにならないか気になるからでしょう。
その気持ちもわかります。
事情を察したのか、2、3年前から「自己紹介のテンプレート」が用意されるようになりました。私はいっさいそのような指示をしていないので、学生が自主的に用意したのでしょう。名前・所属先・推しなど、話すことがあらかじめ決められているのです。







