テンプレートがあれば、「間違った」自己紹介をして、周りから浮くこともありません。初めて目にしたとき、自己紹介に「テンプレート」が必要なほど、人目を気にするようになったのかと感心した覚えがあります。

ブランド物、ランキング…
決定リスクを軽減する様々な手段

 かりに、私たちの決定が周りの人から受け入れられない可能性があるならば、そのようなリスクはできるだけ減らしたくなるでしょう。そうした気持ちを察してか、私たちの周りには決定のリスクを軽減するアイテムや手段があふれています。

 たとえばブランド物などは、その典型です。私たちは消費を通じて、周りの人とは違う自分をアピールしたいと思うと同時に、変わった人だと思われたくないという願望ももっています。

 ブランド物はその欲求を絶妙なバランスで満たしてくれます。ブランド物をもつことで、私たちは人と違うことをアピールできます。そのうえブランド物は「ブランド」であるゆえ、身につけている人に洗練されたイメージを植え付けてくれます。

 ランキングも同様の役割を果たします。ランキングは文字どおり、人びとの好みの順番を表したものです。ランキングにしたがったものを選んでおけば、選択を間違えて恥ずかしい思いをすることもありません。

 科学的に検証されたわけではありませんが、『江戸の格付事情』という書籍では、日本人のランキング好きな性質が書かれています。たしかに、偏差値の序列をことさら重視して受験をし、さまざまな国際ランキングを過剰に意識する姿勢からは、ランキング好きの片鱗がうかがえます。

 多くの人が食事のさいに利用する『食べログ』のようなグルメサイトも、ランキングと同じような役割を果たしています。『食べログ』をはじめとするグルメサイトは、お店の利用者が付与した点数を集計することで、お店を格付けしています。

 誰かを食事に誘うとき、あるいは、懇親会の幹事になったとき、ひとまずグルメサイトで評判や点数を確認する人も少なくないでしょう。それが安心の保障につながるからです。