高市政権“強い経済”と実質賃金引き上げ実現の鍵Photo:SANKEI

高市政権、優先課題は実質賃金引き上げ
10年間で年率0.1%、米国は1.5%

 2025年10月に誕生した高市早苗新政権の出足は好調といっていい。

 報道各社が11月初めまでに行った世論調査によると、政権の支持率は60%弱から80%超と軒並み高水準となった。東京で開催されたトランプ大統領との初の日米首脳会談では、同盟関係の一段の強化や日米関税合意の着実な履行が確認されるなど、新たな問題を米国側から求められることもなく、トランプ大統領との信頼関係の構築が進んだ。

 日経平均株価は米国株高などの追い風もあって最高値を大きく更新し、10月31日には終値で初の5万2000円台となるなど、その後も活況が続く。

 新政権が、「強い経済」実現などを掲げ経済重視の姿勢を打ち出したことが好感されているといえる。だが今後、国民や株式市場などからの高い期待に応えるには、日本経済の成長加速は喫緊の課題だ。

 20年代の実質GDP成長率を主要7カ国(G7)で比較すると、日本は下から2番目にとどまった。需要項目別では輸出が最も増加し、インバウンドを含めた外需の取り込みに比較的成功した一方、個人消費は最も弱かった。

 個人消費の不振は、実質賃金が低迷したことが強く影響した。実質賃金の伸び率はデフレ・低インフレ期を含む14年以降の10年間で年率+0.1%だった。同時期の米国(同+1.5%)やドイツ(同+0.9%)との上昇率格差は大きい。

 日本経済は現在、食料品を中心とした供給ショックによる行き過ぎた物価上昇に直面しており、春闘などで高水準の賃上げが行われても家計の購買力が改善しにくい状況にある。生活困窮者への支援やブラケットクリープ対応(物価上昇による税負担増加の抑制)など、首相が最優先課題とする物価高対策の必要性は当面、大きいことは確かだ。

 だが低成長を脱する王道は、実質賃金のトレンドを引き上げ、内需の成長をいかに加速させるかだ。

 この点で注目は、首相が掲げる「危機管理投資」の帰趨(きすう)だ。