1日5時間以上練習、朝から晩まで演奏会…
輝かしい受賞歴のウラにある努力

 それでは軍楽隊のDNAを100%受け継いだ音楽隊の実力はいかほどだろうか。その実力は数々の受賞歴が物語っている。陸上自衛隊中央音楽隊は内閣総理大臣特別賞状、文化庁芸術祭優秀賞、日本管打・吹奏楽アカデミー賞演奏部門を受賞。航空自衛隊航空中央音楽隊も同アカデミー賞を獲得している。国内での評価は極めて高い。

 真に驚くべきは国際的な評価だ。世界の軍楽隊に贈られる最も名誉ある賞「ジョージ・S・ハワード大佐顕彰優秀軍楽隊賞」を1992年に航空中央音楽隊がアジアで初めて受賞したのに続いて、2014年には海上自衛隊横須賀音楽隊も受賞した。

 さらに陸上自衛隊中央音楽隊は、2017年に世界最高峰の軍楽隊イベント「エディンバラ軍楽祭」で、全出演者による投票で選ばれる「最優秀出演団体賞(ポーリーソード賞)」を受賞し、「名誉の剣」を授与された。世界中の軍楽隊が集う舞台で、日本の自衛隊音楽隊がトップに立った。冒頭の「エリート集団」という言葉は、世界が認めているのだ。

「なぜ自衛隊に音楽隊が必要?」「音楽隊も戦闘訓練するの?」→防衛省OBの答えが的確すぎた!2025年度の「自衛隊音楽まつり」公式ポスター。 出典:防衛省・自衛隊公式サイト

 このように外部からの評価が極めて高い音楽隊だが、国民からの評価は毎年11月に日本武道館で開かれる「自衛隊音楽まつり」の盛況ぶりに表れている。陸海空の音楽隊が全国から集まるイベントの抽選倍率は7倍を超え、プラチナチケット化して久しい。

 自衛隊のスターとして華やかな世界に身を置いているように見える音楽隊員だが、その日常は多忙を極める。通常日は午前中に個人練習やパート練習、午後には全体での合奏練習や行進訓練が行われる。おおむね「1日5時間以上は楽器に触れている」という。

 コンサートや式典がある日は、早朝から会場へ移動し、楽器や機材の搬入・設営。リハーサルを経て本番演奏を行い、終われば撤収作業。帰隊するのは夜遅くになることも珍しくない。演奏会の企画、チケット管理、輸送手配、動画の編集といった裏方業務も、すべて隊員自身が担当する。ステージの華やかさの裏には、地道な努力が積み重ねられている。