つまり生産性三原則を遵守するならば、時間無限定(編集部注/「いつでも働かなければならない」「自分の自由になる時間を選べない」ということ)という考え方が必要になるのだ。

 時間無限定という考え方が浸透していることの例としては、企業が副業に抵抗感を示すという点をあげることができるだろう。

 雇用契約では勤務時間は明確に規定されているので、勤務時間以外の時間をどう使おうが、雇用主である企業がそれに口をはさむことは本来おかしい。そのため、企業が副業を制限できるのは、それ相当の理由がある場合に限られる。

 ところが、実態はそうではない。企業は時間無限定な存在であるはずの正社員が、勤務時間外であろうと副業をするなどあり得ないことだと考えていたのではないだろうか。正社員であれば、いつ何時であろうと時間外勤務を引き受けてくれなければ事業は運営できない。にもかかわらず、副業が理由で時間外勤務を正社員が断ることなど、言語道断だと企業はみなすわけだ。

正社員の副業を禁止する
会社側の苦しい言い訳

 副業は就業時間外に行われる。そのため、厚生労働省のモデル就業規則にある禁止または制限できる事由(労務提供に支障をきたす、企業秘密の漏洩など)に限って、企業は副業を禁止できる。

 ところが、正社員に無限定性を求めたいと考える企業にとっては、副業を全面的に禁止したいという本音があっても不思議ではない。

 実際にパーソル総合研究所が2021年3月に実施した調査によれば、「自社の業務に専念してもらいたいから」(49.7%)が、企業の副業禁止理由の第1位になっている(注2)。

 無限定性において、企業は正社員の勤務地と時間を拘束できる。その場合、正社員の就業時間外の時間とは、自社の業務に備えるために休息する時間であると企業はみなすだろう。自社のために休息する時間を、副業で他社のために使うことを、企業は許せないと考えてしまうのだ。

(注2)パーソル総合研究所「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」