総予測2026

競争緩和に向かうはずが一転して、一部の学校で激戦が予想される2026年の首都圏の中学受験。特集『総予測2026』の本稿では、中学受験塾SAPIXの広野雅明・教育情報センター本部長が、混迷の26年入試を占う。(聞き手/ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

高校授業料無償化で
「ゆる受験」が増加へ

――首都圏(1都3県)における2026年の中学入試の受験者数は、25年入試と比べてどうなるのでしょうか。

 全体の受験者数は結局のところ、25年入試並みになるのではないかと思っています。25年入試を振り返ると、春先の模擬試験の段階では受験者数がやや減ると予想していました。ところがふたを開けてみると、微増した学校が少なからずあった。大手の模擬試験を受けていない受験者層や、東京都内の学校を受けずに千葉県や埼玉県、茨城県など地元の学校だけを受ける受験生も増えているのです。

 中学受験の過熱ぶりがここ数年よく指摘されますが、中学受験で一番注目されがちな男女御三家のような最難関校にはそれは当てはまりません。受験者が現在増加しているのは、学力層で言えばいわゆる中堅下位校です。

――その理由は?

 やはり高校授業料無償化の影響もあると考えています。実際、受験者が増えている学校は従来、高校からの生徒募集が中心となっているような学校です。高校授業料無償化が始まったことにより、もともとはそうした学校に高校から入るつもりだったものの、中学からの入学を考えるようになった家庭が増えているのではないかと。「ゆる受験」という言葉も出てきていますが、小学5~6年生になって受験へ本格的にかじを切ってきたような受験者層が増加しています。

 志願者数を増やしている学校の特徴を挙げると、「入り口」である中学受験のハードルはそれほど高くはないが、面倒見が良く中高6年間でしっかり生徒を預かることで、「出口」の大学進学実績は決して悪くないような学校です。

 例えば都内で言えば、25年入試でブレークした日本工業大学駒場のほか、淑徳巣鴨、桜丘、足立学園、佼成学園、十文字などは、年によって多少の増減はあれども着実に受験者を増やしています。

 こうした学校の一部は(公立中高一貫校の入試である)適性検査タイプの試験方式も用意していたりするので、もともとは公立一貫校の受験を目標にしていた層も受けやすい。試験科目数も4科目だけではなく、算・国の2科目、あるいはプレゼンなどのいわゆる「新型入試」で受験できる学校や英検資格を活用できるような学校も少なからずあるので、比較的挑戦しやすいという面もありますね。

――首都圏の26年中学入試のトピックは何でしょうか。

 最大のトピックは、11年ぶりに2月1日が日曜日に当たることで起きる「サンデーショック」(ダイヤモンド編集部注:東京都と神奈川県の私立中学校入試の解禁日である2月1日が日曜日に当たることで、プロテスタント系の学校の一部が入試日を変更して起きる受験動向の変化)です。

 女子御三家の一角である女子学院をはじめ、東洋英和女学院や立教女学院、横浜共立学園といった学校が入試日を2月2日に変更するため、2月1日は例年よりも入試実施校が減り、逆に2月2日の入試実施校が増えることで、併願日程の組み方が例年よりも難しくなるでしょう。

 ただし、15年の前回サンデーショックと26年のそれには大きな違いもあります。

次ページでは、前回サンデーショックとの大きな相違点に加え、男女御三家の受験者動向の分析、さらに注目のニューフェイス校を占う。入試本番まで1カ月余り、ぜひ目を通してほしい。