黒田東彦が分析する「AIと経済成長」、AIの普及は経済成長率を引き上げるのか?ChatGPTなどさまざまなAIが登場し、世界の大手テクノロジー企業はAIへの投資を加速させている Photo:Kenneth Cheung/gettyimages

2025年の歴史的な株高をけん引したのは「AIブーム」だ。前日本銀行総裁の黒田東彦氏が執筆するダイヤモンド・オンラインの連載『黒田東彦の世界と経済の読み解き方』の今回のテーマは、「AIと経済成長」。AIの普及は経済成長率を本当に引き上げるのか?

AIは経済成長率を引き上げるのか?
短期的には投資急増で経済成長にプラス

 AIによる技術革新が進み、ChatGPTなどさまざまな先端技術が経済成長率を引き上げるかどうかが、AIの先端を行く米国などで議論になっている。その場合、当面の短期的な影響と、中長期的な影響を区別して考える必要がある。

 当面の経済成長への影響については、プラスであることは間違いない。

 例えばAI投資が急増している米国では、マイクロソフトやグーグルの持ち株会社アルファベット、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)、アマゾン・ドット・コムのAIデータセンターへの設備投資額が2025年は総額3700億ドルと見込まれている。これが、米国における25年前半の成長率1.6%の大半を生み出しているとみられている。こうした状況は26年も続くと思われる。

 ただし、これは、AIへの設備投資が行われる間の短期的な総需要効果であって、AIが中長期的に経済成長率を引き上げるかどうかは、AIが労働生産性を上昇させるかどうかにかかっている。