「CAGEフレームワーク」で
エムスリー成功の理由を分析

 エムスリーが海外ビッグテックや海外競合との直接対決に巻き込まれず、着実に成長した理由は何でしょうか。

 補助線として紹介したいのが、当時ハーバードビジネススクールに在籍していたパンカジュ・ゲマワット教授が提唱したCAGEフレームワークです。各国の市場を分断する壁を文化(Culture)、制度(Administration)、地理(Geography)、そして経済(Economics)の4つに分類し、その頭文字を合わせてCAGEと呼びます。

CAGE筆者作成
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 CAGEフレームワークは一般的に、他国市場に参入する側が、参入難易度を測る際に使うフレームワークです。逆に考えれば、自国のある産業が海外から参入しにくいかどうかを考えるヒントにもなります。

 例えば、情報やデータに限っていえば、Gの地理的制約を無効化するのがインターネットです。Facebookのような大手SNSがグローバルに展開できた背景の一つです。Eの物流インフラが整っていれば、AmazonのようなECも参入しやすくなるでしょう。

 ただし、Cの文化とAの制度は、ネットが登場したからといって、なかなか変わりません。

 CとAが異なる場合、その差異への対応には時間とコストが必要となります。そのため、欧米で標準化されたサービスがすぐには投入できません。こうした文化対応の重要性は、前回のメルカリでも取り上げました。

 このCAGEフレームワークを補助線として、なぜ海外企業は日本でエムスリーほどの存在感を示せなかったのかを考えてみます。