そういう「お世話になっているみなさんへの恩返し」的なこともあるが、筆者はもうひとつ、日本の農業政策が「社会主義」の影響を受けているからではないかと思っている。

 元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏も10月27日に生出演したテレビ番組で、物価対策でおこめ券を配布することについて「社会主義みたいな国がやること」「高く価格を維持して、クーポンみたいなもので国民の負担をやわらげるっていうのは、社会主義的なやり方」と一刀両断している(スポニチアネックス 10月27日)。

 橋下氏の考えにはまったく同感だが、ちょっと違うのは社会主義でも、日本は「国家社会主義」の影響を色濃く受けているのではないかということだ。

 日本の政策が実は戦前の影響を受けていることは今更説明の必要もないだろう。それはコメ政策も然りで、「政府のエリートが需要と供給のバランスを考えて、農家の生産量を調整してあげますね」という考え方のベースには、戦中から1995年まで続いていた「食糧管理法」がある。これは米などの主要食料を国民に安定供給するため、生産・流通・価格を国が責任をもって管理するという法律だ。

 では、この「食管法」というのは日本独自の発想で生まれたものかというと、そんなわけがない。今何かとつけてアメリカ様をあてにしているのと同じくこの当時、イケていた同盟国の政策をパクった。ここまで言えばお分かりだろう、国家社会主義ドイツ労働者党、つまりナチスの政策である。

 経済評論家の小島精一氏が「読売新聞」(1934年8月20日)に寄稿した「ナチスの農業統制と日本」では、日本の農業統制のイデオロギーはドイツから相当強烈な刺激を受けているとして、ドイツの農業政策をこのように「称賛」している。

「農業は全然営利事業ではない。農産物を高く売り付けて資本家風な儲けをむさぼろうとする無駄な、滑稽な努力から素朴な農民を解放して、農業を公共的事業として取扱い、農産物の価格を公権的に安定させ、農民の生活の維持は国家が義務として保証すべきものだという確固としたイデオロギーがそこで厳守されている」