「プロアクティブ行動」を社内に浸透させる意味

 下野さんたち(日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門)の調査では、「プロアクティブ行動をとる人材は離職しない傾向がある」という結果も出ている。企業にとっては、社員に「プロアクティブ行動」を促すことがリテンション施策にもなるのだ。

下野 離職しないのは、新しいことに挑戦するといった「プロアクティブ行動」が周りのメンバーから認められ、「自分の居場所がきちんとある」という感覚が、自身のキャリア構築にとってもプラスだと認識しているからでしょう。

 一人ひとりの社員が、4つの「プロアクティブ行動」を知り、行動しやくする機会を、部長や本部長クラス、人事部門や現場管理職(課長など)が用意していく――それが、社員とチーム、チームと企業のWIN-WINの関係を生み出し、離職を減らしていきます。

 また、私たちの調査では、40代、50代になるとプロアクティブスコアが低下する傾向が明らかになりました。それを防ぐために、ある企業では30代の若手社員を積極的に関連企業などへ出向させて、エンプロイージャーニーを描く環境を与えています。30代での経験で、たとえ、40代、50代になったときに希望したポジションに就けなかったとしても、「プロアクティブ行動」を維持できるのです。

 人材採用のハードルが年々高くなり、市場の変化への柔軟な対応や生産性の向上が求められるなか、多くの企業の人事部門は、社員の「プロアクティブ行動」を望んでいる。

 最後に、改めて、「プロアクティブ行動」の価値を、下野さんに語ってもらった。

下野 キーワードは「キャリア自律」だと思います。私たちは、人生において、多くの時間を仕事に使います。自分がどういう姿勢で仕事と向き合うかが、人生の充実感に直結するでしょう。「生活費を稼ぐためだけ」と割り切るには、私たちはあまりに多くの時間と労力を仕事に費やしています。

 自分が持っているスキルやマインドをベースに、「これをやったら面白い仕事ができるはず」と考え、ワクワクした気持ちで動いていくのが、「プロアクティブ行動」です。出世競争や収入の比較といった優勝劣敗のキャリア観ではなく、自分の人生をどのように豊かなものにしていくのかという観点でキャリアを捉え直すのが「プロアクティブ行動」の本質だと、私は考えます。

 企業が人的資本経営に取り組むアプローチとして、「プロアクティブ行動」をチーム・組織内で浸透させていくことは、人材の活性化やリテンション対策として有効です。経営層や人事担当者の皆さんが率先して、「プロアクティブ行動」を社内に広めていってほしいです。