金利上昇、トランプ関税、人手不足で明暗 半期決算「勝ち組&負け組」【2025秋】Photo:szjphoto/gettyimages

国内市場の縮小や中国メーカーの安値攻勢などにより、鉄鋼業界では危機的状況が続く。そんな中、今年日本製鉄が約2兆円で買収した米USスチールが“大ゴケ”する一方、神戸製鋼所が2024年度から万年3番手の地位を脱するなど、鉄鋼業界では序列が激変している。特集『金利上昇、トランプ関税、人手不足で明暗 半期決算「勝ち組&負け組」【2025秋】』の本稿では、苦境にあえぐ鉄鋼業界で巻き起こっている「大波乱」の模様を解説するとともに、危機から脱するための大手3社の戦略を明かす。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

中国勢の安値攻勢が続く鉄鋼業界
国内市場も縮小で、苦境から抜け出せず

 苦境が続く鉄鋼業界に、好転の兆しが見えない。

 中国の鉄鋼メーカーは過剰生産を続けており、中国国内で余剰となった製品はアジアや欧州に安値で流出し、各地の市場を荒らし回っている。そこに米中対立などの地政学リスクやトランプ関税も加わり、グローバル鉄鋼市場の不透明感は増すばかりだ。人口減少で国内市場の縮小が続く日本勢にとって、海外マーケットの不調は全社業績の不振に直結する。

 12月12日、中国政府は2026年1月から一部の鉄鋼製品の輸出を許可制にすると発表した。中国メーカーによる過剰生産への批判に対応したものとみられるが、現時点ではその効果は不透明だ。

 そんな中、日本製鉄は米鉄鋼大手USスチールを約2兆円で買収することに成功した(日鉄のUSスチール買収については、『日本製鉄のUSスチール買収は完全子会社化で決着!3.6兆円ディールに日鉄が支払う「代償」とは?』参照)。巨大な米国市場を手に入れ、成長を加速させるかに見えたが、USスチールの運営は出だしからつまずいている。次ページで述べるような「誤算」により、USスチールは収益貢献ができていないのだ。

 国内鉄鋼市場が伸び悩む中、他の日系鉄鋼大手も独自戦略で活路を見いだす。JFEホールディングス(HD)も神戸製鋼所も国内鉄鋼事業に依存しない収益構造を築きつつあるが、25年度は明暗の分かれる結果になりそうだ。

 次ページでは、苦境にあえぐ鉄鋼業界で巻き起こる「大波乱」の模様を解説するとともに、危機から脱するための大手3社の戦略を明かす。