「日本はやっぱりすごい!」と喝采を浴びた日

 2010年に米国で開かれた「Mobile Future FORWARD 2010」というカンファレンスに、私はスピーカーの一人として参加した。朝8時に開演。主催者の挨拶に続き、プロクター&ギャンブルの元CIO、AT&TウエストのCEO、そしてインテルの研究所のシニアバイスプレジデント兼GMのスピーチと続き、その後、私がプレゼンテーションをさせていただいた。

 インテルのシニアバイスプレジデント氏は、モバイルが社会生活に与える影響についてのスピーチをされた。その中で、たとえば子どもが一人一台モニターを使って、あるいはメガネ型の端末を装着して勉強をしていると、家庭内のコミュニケーションが阻害されるといった、将来的な課題を想像しながら話していた。

 続いて、私がスピーチをしたわけだが、最初はいつも通りのモバイル広告の発展の歴史。それだけでもモバイル先進国としての日本の姿を十分に伝えられた手応えがあったが、プレゼンテーションの最後に使った映像によってさらに多くの反響をいただくことになった。

 流した映像は「2010年VISION」。2010年のイベントで「2010年VISION」というのもおかしな話だが、その10分程度の映像が作られたのは、1999年。つまり、講演時点がまさにその10年後であったわけだ。

 映像を見たオーディエンスは「わぉ!」「グレート!」「日本ってやっぱりすごい!」「こんなことを10年前に考えていたのか!」と拍手をしてくれ、壇上にいた私も誇らしく思ったことを、今も鮮明に覚えている。

今の時代を的確に予測していた未来ビジョン

 NTTドコモが携帯電話を活用したインターネットビジネスモデルとして「iモード」を生み出し、発表したのが1999年1月。その前年である98年から動き出したプロジェクトが「2010年VISION」だ。21世紀の社会を予測し移動体通信の果たすべき役割をまとめ、世の中に伝えて行こうというものだ。

 ドコモ社内に部門横断のチームができ、電通が事務局を任された。私は当時、電通のドコモ担当営業として事務局に所属し、一緒に議論したのを覚えている。その際に、「MAGIC」というコンセプトが作られた。「モバイルフロンティアへの挑戦」をスローガンとして、5つのキーワードで表現したものが「MAGIC」だ。

 具体的には、

  • M=Mobile Multimedia:音声だけでないモバイルメディアを推進する。
  • A=Anytime,Anywhere,Anyone:いつどこでも誰とでもコミュニケーションできる移動通信を実現する。
  • G=Global Mobility Support:グローバルで利用できるモバイル環境をサポートする。
  • I=Integrated Wireless Solution:ワイヤレス技術を活用し、お客様のニーズに合ったソリューションを提供する。
  • C=Customized Personal Service:個人の趣味や趣向に合わせてカスタマイズされた情報で生活を支援する。

 ということを意味していた。