株式を上場している企業は、証券取引所の要請によって、決算発表時に翌期の業績予想も公表していることをご存じだろうか。売上高、営業利益、経常利益、当期純利益などの予想が公表されている。ただし、外部環境の変動の影響を大き受ける業界や企業の事情によっては、業績予想を発表しないケースや、一部だけに発表することも認められている。

 決算ランキングの第5回目では、この業績予想と実績がどのくらい異なっているか=「乖離率」を計算してみた。対象は業績予想を公表している会社で、過去3期分の「経常利益」の「期初予想」(その期の第1回目の予想)と、その期の「実績」を比較。実績が予想を上回った、つまり予想より実績の方がよかった会社を抽出して、乖離率が大きい会社100社と、小さい会社100社をランキングした。

乖離が大きいことはいいことか

 こうした乖離率を見るのは、各企業によって業績予想の出し方に、ある種の「クセ」があると考えられるからだ。大きく分けると、次の3つに分類される。第1が非常に慎重な(弱気な)予想を出し、実績がそれを大きく上回ることが多い会社。第2が乖離率の小さい、言い換えれば業績予想が正確な会社、第3が強気の予想を出し、実績がそれを下回ることが多い会社だ。

 表1は乖離率平均が大きい会社のランキングだ。表を見て分かるように、業種的には散らばっており、乖離率が大きい、小さいは業種というよりも、やはり会社ごとのクセと言えそうだ。

 表を見る場合の注意点は、利益の規模。例えば、企業の規模が小さく、予想経常利益を1億円としていたのに、実績が3億円だったとすると、乖離率は200%となる。これに対して経常利益予想が1000億円で、実績が1300億円なら、乖離率は30%にしかならない。また、過去3期のうち1期でも非常に大きな乖離が発生すると、3期平均の乖離率が大きくなる。

 表1トップの大日本住友製薬は、住友化学系の医療用医薬品メーカーで、大日本製薬と住友製薬が合併して発足した。3期前の乖離率が大きいことが、平均乖離率をあげている。第2位の東和銀行は群馬県が地盤の第2地銀で、公的資金を注入を受けている。第3位のレイはテレビCM等の企画、映像制作や編集などを行っている。2期前の乖離率が大きいことが、平均をあげているが、その時の期初予想は5000万円で、実績は8億4100万円だった。

 株価はすでに予想されている事象は織り込み済みで、予想外の「サプライズ」によって、大きく動く。その意味では、乖離率の大きい会社は、株価が大きく変動する可能性があり、株式投資としては面白みがあるとも言える。一方、企画・計画の立てかた、内部の情報収集・管理といった経営管理がお粗末か、意識的に保守的な予想を出しえているともいえるわけで、会社経営の安定性、情報開示の姿勢の点で問題なしとは言えない。