● 意思決定マトリックスから「重要×緊急」を迷わず選べるか

 ビジネスにおける優先順位を整理するフレームワークに「意思決定マトリックス」があります。これは、下図のように、課題を「重要度」と「緊急度」の2軸で分類するものです。

 一般に、企業の存続に関わる不祥事対応は重要度が極めて高く、緊急度が極めて高い領域、つまり右上(第1象限)に位置づけられるべき、最優先事項です。

 しかし、実際の危機管理の現場では、この当たり前の判断が最も困難になります。

「今日予定されている放送はどうするのか」「在庫はどう処理するのか」といった、現場レベルの細かな事情が判断を鈍らせるからです。その結果、多くの企業が「部分的な自粛」や「形式的な謝罪」といった、中途半端な二番手、三番手の策を打ち、傷口を広げてしまいます。

 ジャパネットたかたの対応が優れていたのは、この迷いが一切なかった点です。「全番組自粛」という決断は、“優先順位が明確な組織だけが決定できる対応”です。

 同社にとって「顧客の信頼」は何よりも代えがたい最重要事項だったのです。そして、それを脅かす事態に対しては、全ての業務を止めてでも対処するという優先順位がトップダウンで徹底されていた証です。

 同社の強固な企業文化と、経営判断の質の高さが如実に表れたといえるでしょう。

危機対応は企業の「真価」をあぶり出す
“価値の源泉”をどこに置くか

 では、ジャパネットたかたの22年前の決断を、現代の私たちはどう生かせばよいのでしょうか。

 不祥事対応とは、単なる謝罪の手続きではありません。それは、“自社の価値の源泉を何と捉えるか”を社会に公表する、究極の経営判断そのものです。

 不祥事は、起きた瞬間に企業の“真価”を容赦なく露わにします。平時にどれほど立派な理念を掲げていても、危機のただ中では、企業が本当に大切にしているものだけが意思決定のフィルターを通過するからです。

 ジャパネットたかたが示したのは、「売り上げよりも、顧客との信頼関係こそが価値の源泉である」という、ブレない軸でした。