自動車 “最強産業”の死闘Photo:JIJI

トヨタ自動車グループが豊田自動織機に対して実施中のTOB(株式公開買い付け)を巡り、米投資ファンドのエリオット・インベスト・マネジメントが圧力を強めている。エリオットは「スタンドアローン・プラン」を提示し、独立企業として事業を進めれば、「株価4万円超」も可能と豪語している。ところが、エリオットが示したプランには、「三つの致命的欠陥」が存在する。長期連載『自動車 “最強産業”の死闘』の本稿では、関係者などへの取材を基にエリオット案の死角を明らかにしていく。(ダイヤモンド編集部 山本興陽、井口慎太郎)

豊田自動織機の株価はTOB価格を上回り推移
エリオットが「スタンドアローン」計画を提示

 トヨタ自動車グループが、豊田自動織機に対して実施しているTOB(株式公開買い付け)を巡り、アクティビストが攻勢をかけている。

 今回のTOBは、1株当たり1万8800円の買い付け価格で、期間は2月12日まで。トヨタ自動車グループが2025年6月に公表したTOB計画では、買い付け価格は1万6300円と想定していた。その後、トヨタ自動車グループはTOB計画の公表後の株価上昇などを反映し、26年1月に買い付け価格を15%引き上げた。

 ところが、足元の株価はTOB価格をさらに上回る水準で推移する。株価が高値で推移する要因が、アクティビスト、とりわけ米エリオット・インベストメント・マネジメントの存在だ。

 エリオットの豊田自動織機の株式保有比率は、26年1月に6.65%となり、2月5日には7.14%まで買い増したことが判明した。エリオットの買い増しで、市場では「TOB価格はさらに引き上げられるのでは」という期待が株価を押し上げているようだ。今回のディールにはエリオット以外の投資家も群がっている(『豊田自動織機TOBに群がる“ハイエナ”アクティビストの正体とは?濡れ手で粟を狙う「主要ファンドの実名」と“巧妙な手口”』参照)。

 そして、エリオットはさらなる「一手」を打っている。エリオットは1月18日に書簡を公開し、豊田自動織機の価値をTOB価格を大きく上回る「1株当たり2万6134円」と主張した。その上で、上場を続ける独立企業として「スタンドアローン・プラン」を実行することで、「株価4万円超」も可能と豪語している。

 しかし、エリオットが示した「スタンドアローン」計画には致命的な欠陥が存在する。「株価4万円超」の根拠となる対抗案は絵に描いた餅ともいえるのだ。次ページでは、関係者などへの取材を基に「三つの致命的欠陥」の中身を明らかにする。