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米国市場は、日本の自動車・部品メーカーにとって、長年にわたり“稼げるドル箱”であり続けてきた。しかし今、その前提が崩れ始めている。関税政策、雇用重視の産業政策、EV(電気自動車)を巡る政治判断――米国では「売るなら造れ」という現地生産圧力がかつてなく強まっているからだ。特集『AI産業戦争 米中覇権に呑まれる日本』の#6では、自動車・自動車部品メーカー上場80社を対象に、米国向け出資・資本金に着目し、独自の「米国依存」ワーストランキングを作成した。数字が暴いたのは、もはや引き返せない企業と、これから試練に直面する企業の明暗だった。(ダイヤモンド社メディア局論説委員 浅島亮子)
ドル箱から一転、高リスク市場に
それでも米国シフトは避けられない
日本の自動車メーカーやサプライヤーにとって、米国市場は長らく「ドル箱市場」であり続けてきた。販売規模が大きい上に収益性が高い。ブランド価値の確立にもつながる。第2次トランプ政権が発足する前までは、米国は最重要かつ安定的な市場と位置付けられてきた。
だが、その前提は大きく揺らいでいる。
最大の理由は、米国での現地生産圧力が、かつてないほどに強まっていることだ。トランプ大統領が中間選挙を見据えて打ち出す関税戦略、雇用創出策、EV(電気自動車)締め出し策など一連の施策は、日系メーカーを翻弄している。
関税を違法とする米国訴訟の行方、現地生産を進めた外資企業に戻される関税還付金の扱い、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の運用――など、日系メーカーにとってマイナスのことばかりではないが、いずれも極めて先行き不透明だ。
そもそも中間選挙で民主党が勝利したとしても、製造業回帰と雇用創出を重視する流れは変わらず、完成車メーカーであるか自動車部品メーカーであるかを問わず、「米国で売るなら米国で造れ」とするプレッシャーは強まっている。
厄介なのは、もはや、米国が自動車を造るのにコスト競争力の高い地域ではないという点だ。インフレの進行により、人件費、エネルギーコスト、工場建設費は上昇を続けている。サプライチェーンにおいても、中国やアジアの低コスト構造を移植するのは難しい。それでも、関税回避や政治リスク低減のために、現地生産を選ばざるを得ないというジレンマに、各社は直面している。
現時点では、「対米の自動車・自動車部品関税が15%程度であれば、コスト競争力で吸収可能」と踏んでいる企業もある。実際に、貿易統計によれば、2025年の米国向け輸出の平均単価は前年比10.9%も下がった。
だが、その身を切る施策もどこまで許容されるのかは極めて不透明だ。関税率の引き上げ、部品への波及、還付金制度の変更次第では、その前提は崩れてしまう。米国の周辺国であるメキシコやカナダと連携を深め、USMCAを活用したサプライチェーン網を築いてきた企業も多い。
そして何より、すでに米国シフトを強めてきた企業は、いまさら引き返すことができない。工場、設備、雇用、サプライチェーン――巨額の資本を投じた以上、米国事業の縮小・撤退という選択肢は現実的ではない。地政学リスクと通商政策の変化があろうとも、結局は相対的に米国シフトを進めるしかない。
そこで、ダイヤモンド編集部は、東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリストの協力を得て、自動車・自動車部品メーカーの上場80社を対象に、独自の「米国依存ランキング」を作成した。最大の特徴は、売上高や利益といったフローの指標ではなく、「米国向け出資・資本金」というストック指標で米国依存度を測った点にある。
工場建設や設備投資、現地法人への出資、合弁事業など、資本の現地化をどこまで進めたのか。その観点から、米国リスクが高まっている企業をあぶり出した。







