日経平均6万円突破か減速か 攻めと守りの投資術#10

三菱商事や三井物産、伊藤忠商事など注目度の高い企業がそろう総合商社セクター。足元では中東情勢の変化による資源高や、世界的分断による供給不足などで活躍の場がさらに拡大しているが、その勢いは続くのか。また、総合商社は株価にも異変が起きている。2025年以降、PER(株価収益率)が拡大して株価が大きく上昇しているのだ。これは瞬間風速なのか、それとも割安株からの脱却を意味しているのか。特集『日経平均6万円突破か減速か 攻めと守りの投資術』の#10では、トップアナリストが各社の事業戦略を分析しつつ、26年度相場で業績と株価が伸びる企業について具体名を挙げて紹介。「いつか来た道リスク」など見え隠れする三つのリスクも紹介する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

資源高、インフレ、分断が好機に
万年割安株から脱却できるか

「米国とイランの戦闘終結の合意間近」というニュースが材料視され、4月16日に日経平均株価は史上最高値を更新。まるで5万円割れ目前まで急落したのがうそのようである。

 一方、「合意」のニュースが出ると、株価が指数に劣後しやすいセクターが総合商社だ。野村證券の成田康浩アナリストは総合商社の株価について、下記のように指摘する。

「今回の米国とイランの戦闘が深刻化する局面では、総合商社は逃げ込む先になった。総合商社はトランプ関税の影響も小さかったように、インフレがポジティブになる数少ないセクターだ。端的に言えば、戦争が深刻化して原油高になると注目が集まり、戦争終結で原油安になると売られやすい」

 では、今後はどうなるのか。3月以降の総合商社の株価は一進一退だが、この数年、総合商社の株価は右肩上がりで推移してきた。特に2025年春以降、株価の上昇スピードが加速している。

 成田氏は買い手の変化を指摘する。

「特にこの1年は米国株が割高な水準になったこともあり、海外投資家が参戦してきている。主たる買い手が変わったことで、バリュエーションが切り上がり、業績はこの1年ほぼ変わってないのに株価が大きく上昇した。外国人投資家から見ると、総合商社はバフェットも買っているし、ROE(自己資本利益率)が高いのにPER(株価収益率)が割安に放置されていたセクターだった」

 東海東京インテリジェンス・ラボの栗原英明シニアアナリストは総合商社について、「資源の割合に違いはあるが、各社共に資本効率を重視しながら、キャピタルアロケーションを上手に回している。バランスシートを悪化させるような過剰投資もない。収益を拡大させながら、還元を強化するという循環ができている」と評価する。

 また、足元のように物不足に陥っているときは、グローバルネットワークと調達力に強みを持つ総合商社にとって好機でもある。

「米中対立、ロシアによるウクライナ侵攻、そして今回の中東の混乱。サプライチェーンが切れたところを総合商社がサポートすることでビジネスチャンスを獲得する。得意分野が複数あることも強みになっている」(栗原氏)

 インフレ、サプライチェーンの分断、資源高……、総合商社の事業環境は悪くない。一方、ここから先、さらなる業績拡大、株価上昇のためには課題が大きいことも事実だ。

「バフェットの保有やインフレ局面であることはプラス材料だが、米国株が買いやすくなり、外国人投資家が抜けたらPERが元に戻る可能性は考慮しておきたい。業績面でも、各社が目標とするような継続的な10%成長はインフレで新規投資によるリターンが下がっている中では容易ではない。無理な投資をすれば短期的に成長率は上がるが、減損リスクも高まる」(成田氏)

 世界経済は混迷を深めているが、総合商社は強みを発揮できるのか。業績、株価が躍進する企業はどこか。

 次ページでは、各社の事業の現状を分析しつつ、シナリオ別に強い企業、弱い企業を具体的に紹介。アクセルを踏むことで総合商社が再びはまりかねないリスクについても詳述していく。